過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします
[saga]
2012/02/29(水) 21:01:50.52 ID:fRW4icTG0
自分自身という存在が、この世界から跡形も残さず消え行く想像に、嘗て無い規模の恐怖が織莉子を襲う。
いやだいやだいやだいやだいやだいやいやいやいやいやいやいやいやいや――――!
頭を抱え髪を振り乱し、爛々と血走った目を限界まで見開き、
ガタガタと止まらぬ震えを、溢れ出す恐れごと抑え込む様に、死に物狂いで我が身を掻き抱く。
寒い、と思った。
誰か、誰でもいい、私を抱き締めて。
織莉子は肉体的なものではなく、精神的な抱擁を欲していた。
己が己の価値を見出せないが故に、他者に美国の娘でない、織莉子という個人を認めて欲しかったのだ。
ガシャン!
「ひ……ッ!」
織莉子の混乱に追い討ちを掛ける様な、耳障りな硝子の破砕音が一帯に鳴り響いた。
閉め切っていた窓に、表から誰かが石を投げ込んだのだ。
攻撃されている。防ぐ術もないままに。
無抵抗な織莉子を一方的に傷付ける、夜に紛れ顔を見せない卑怯者。
――殺される。
私は世界に殺される。
私に興味の無いこの世界全てに、初めから何も無かった様に消される。
もし、そうなってしまえば。
脳裏に甦るのは、見るに堪えない父の首吊り死体。
いつか近い将来、私もああなるというの……?
あんな姿を、衆目に晒して――!
いっそここから、逃げてしまおうか。もうここには誰も居ないし、この家を誰も訪れることはないだろう。
ありとあらゆる外部からの圧力に潰れ掛けた織莉子に、一つの考えが浮かんだ。
(そんなこと、私に出来るの……?)
父親の、美国の威光が無ければ、何も出来ない自分。
家族や使用人を失った。学園という居場所を、友人や教師を失った。
この「美国の家」は、織莉子というちっぽけな存在を守る為の、卑近にして矮小な世界の、最後の砦だ。
その砦を放棄して、何処へ逃げるというのだろう。
そんなことをすれば、織莉子は今度こそ一片も残さず消え去ってしまう。
切羽詰った状況に置かれた織莉子にとって、この二択は酷だ。
いよいよ進退窮まった織莉子の目に留まったのは、先ほど投げ込まれた石。
ここに居ても、狙われるだけだ。
何故、狙われるの? 決まってる。ここが、美国久臣の家だから。
目印。標的。汚職議員の家はここです、と表札まで提げているのだから一目瞭然だ。
――美国だから、狙われる。織莉子個人の意思などお構いなしに。
例え家に居たって、誰かが私を見てくれる訳じゃない。
逡巡した後に、やおら立ち上がった織莉子は、ふわふわとした足取りでドアの鍵を開け、
靴を履き、夜の街へと、おっかなびっくり歩き出した。
石を投げた悪漢が、未だ塀の向こう側に居るのではないかという不安と緊張に、
織莉子は身を固くしたが、既に通りに人の姿は無く、ほっと一息漏らす。
ほんの少しの間だけ、この家に別れを告げよう。
次に戻ってくる時、その胸にあるのは希望か、それとも絶望か。
織莉子が背を向けた白い塀には、カラフルなスプレーで全体に亘って罵倒の言葉が殴り書きされている。
それら文字の羅列が形を成し、追い立ててくるかの様で、織莉子には再び帰って来られる自信が全くといって良いほどに、無かった。
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