過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします
[saga]
2012/02/29(水) 21:02:26.23 ID:fRW4icTG0
街を彷徨い歩く、儚い影法師が一つ。
人目を気にして夜の街を歩む織莉子の姿は、安物の香水や厚化粧、汗に酒精を混ぜ込んだ、
咽返る臭いを放つ酔客達には、誰がどう見ても狼の群れに迷い込んだ、か弱い子羊にしか見えなかった。
尤も、容姿は多少大人びているとはいえ、未成年のそれであるからして、
物珍しさから遠巻きに眺める者はあっても、好奇心故に声を掛けよう、などと無体な行いに出る者は居なかった様だ。
客にはなり得ないのだし、彼らには彼らの仕事や私用がある。
織莉子は深夜の街を歩いた経験など、これまで一度として無かった。
美国家に門限という物は無かったが、織莉子は誰に言われるまでもなく
自らを戒め、友人と外出する時以外は、夜遅くに帰宅したりはしなかった。
そして、これからもそうなのだと思っていた。
捨てきれない救いを求めて徘徊する織莉子だが、行く先に心当たりなど無い。
元より無形の希望を探しているのだ。それは宛ら、広大な砂漠に落とした砂金の粒を拾う様な、気の遠くなる作業だ。
何処から手を着ければいいのやら、皆目見当も付かず、一先ず人の多い所から、と織莉子は考えたのだが……。
漆黒の空を彩る、派手なネオンに毒々しい色彩の看板群。
沿道で、のべつ幕無し声を掛ける客引きと、誘蛾灯に寄っていく羽虫の様な客達。
人の欲望というモノが、浮き彫りになる時間と空間が、織莉子の眼前に存在していた。
冴えない風体の中年男が、少々薄着(どぎつい色の下着にしか見えない)の蟲惑的な女に何やら言い寄る光景などは、
事情を窺い知らぬ織莉子にも察するところがあり、……免疫の無い箱入り娘にとっては殊更目の毒だった。
織莉子には、はっきり言って非常に居心地の悪い場所だ。
行き交う人は、皆自分のことに夢中で、織莉子に何かしら働きかけようとはしない。
ここに居る人間達は、自宅近辺の住民の様に織莉子のことを知らない為か、
特に悪意を向けることもないが、それで織莉子の心が満たされるということは、決してなかった。
彼らは、織莉子に興味が無いのだ。
金を落とす客ではないから。欲を満たす情婦でないから。己にとって不要であるから。
――ここにも、私の居場所は無い。
誰も私のことを見ていない。私の周りに居た人達と同じだ。
私のことを美国の娘だと知っているか、知らないか、違いはそれだけだ。
理解するや否や、暗澹たる感情が織莉子の心内を瞬く間に占めていく。
希望を抱き、求めながら、悉く裏切られ奪われて絶望に堕ちるのはこれで何度目だろう。
そうなれば、人はやがて希望を抱くことを恐れる様になる。
織莉子もまた、例外ではなかった。
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