過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします
[saga]
2012/02/29(水) 21:03:58.77 ID:fRW4icTG0
「美国、織莉子……ッ!」
声が、……まさに今生の別れを告げようとしていた織莉子の命を、驚愕に満ち満ちた声が。
織莉子を取り巻き緩慢に殺そうとしていた、果て無き闇を切り裂く、それでいて低く抑えた声が。
腰まで届く黒髪を、風に靡かせた美しい少女が、怨嗟と共に吐き出した、尽きることのない呪詛が。
織莉子をこの世界に、留め、拾い、掬い、縛り、手繰り寄せ、繋ぎ止めた。
…………誰、なの?
いつしか沈む夕陽を背にして、織莉子の前に立っていたのは、まるで見覚えのない少女だった。
にも関わらず、彼女は間違いなく織莉子を名前で呼んだのだ。
一言一句、違わずに。
何故。
「か……っ」
その声が、自分の咽喉から漏れたのだと自覚した時には、少女に首を締められていた。
荒事と凡そ無縁の織莉子は、突然の直接的で理不尽な暴力に晒され、ただ怯え、困惑する。
そんな織莉子の様子に反して、両の手に籠められた握力。
何より、紛れも無い憎悪を孕み、織莉子を忌々しく睨み付けるその眼。
断じて冗談の類などではない、疑う余地すら無い、絶対の殺意。
凄まじい力と明確な悪意で以て、この娘は織莉子を傷付けている。
「……はな、……して」
織莉子は知らず知らず、咽喉仏や頚動脈を圧迫される痛苦に、弱々しい抵抗の意思を示していた。
実際には、振り払おうとしたが、呼吸も儘ならず意識が朦朧としていたのだ。
視界がホワイトアウトしそうになり、意識を手放す一歩手前。
織莉子の懇願が果たして届いたのか、細い首を捕えていた手は、唐突に放された。
「ひゅっ、……けほっ、ごほっ!」
酸素を求める肺が強制的に空気を吸い上げ、呼気と吸気とが混じり合い、織莉子は激しく咳き込む。
ひゅうひゅうぜえぜえと、無様に、貪欲に。死に行こうとしていた意思に反し、生存本能に従って機能する身体。
織莉子はそんな自分が情けなくて、涙を零した。
思考能力が奪われていた脳にも徐々に血液が行き渡り、織莉子の意識は平生とは言わないまでも、幾分回復していた。
指先の感覚に乏しく痺れているのは、まだ血流の隅々までは酸素を乗せたヘモグロビンが浸透していないからか。
視界は明瞭で、織莉子の首を締め上げた少女の姿も、太陽を背に翳っているが確りと全身が見て取れる。
「ごめん……なさい……人違いでした」
少女の口から短く紡がれるのは、謝罪の言葉。
躊躇いがちに伏せた黒目が、織莉子を直視せず、僅かに逸らされた。
が、おかしい。それでは余りにちぐはぐだ。
織莉子の名を識り、有りっ丈の憎しみをその手に籠めてきた、血も凍る目付きの女と
たった今人違いだと気不味そうに言い、落ち着き無く暇乞いをする少女とが、まるで別人の様だ。
「――」
踵を返し、速やかに立ち去ろうとする少女に対し、織莉子は咄嗟に声を掛けようとしたが、結局何も言えずじまい。
艶やかな長髪を再び風に靡かせ、織莉子への興味を失ったとでも言いたげな背中が、小さくなっていくのを見送るのみ。
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