過去ログ - 鑢七実「ここは………どこかしら?」布束砥信「学園都市よ」
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925:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/02(火) 03:15:13.55 ID:2lbVeYvl0
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ある、夜の事である。

一人の少女が公園を歩いていた。余熱が冷めきらぬ大覇星祭四日目の夜。街中がお祭り騒ぎで大通りはまだ明るい。だが、ここは、月明りが雲で隠れている所為もあって、周囲は真っ暗だ。

ここは、夜になると誰も近づかない。何故なら、ここはある噂が有るからだ。


『とある公園には、虚数学区の入り口がある。夜にその扉は開き、誤って入り込んだら最後。二度と出れない』


その舞台となっているのが、彼女が歩いている公園。

噂は周囲の学校の生徒にしか伝わっていない、学園都市の数ある都市伝説の中ではマイナーな方だが(そもそも各学区でも同じようなモノが幾らでもある為)、それでも効果は絶大だった。

だから夜に、ここは誰も通らないし入らない。近寄りもしない。例え昼間はイチャイチャデートのカップルがいようが、キャッチボールをする子供がいようが、アイスを売るオッチャンが車を引っ張っていようが、夕暮れ時になると人々は去っていき、夜になると誰もいなくなる。

故に、夜は真っ暗なのだ。

街灯はあるがそれらの光は微小で、3mも離れると足元が見えなくなる。

では、なぜ少女は明るい街を歩かず、この暗くて怖い噂があるこの公園をわざわざ歩いているのか……。

それは―――


「不味い。不味い不味い不味い。不味いわね。門限に遅れてしまう」


―――学生寮の門限があと五分ちょっとまで迫っているからだ。

只今の時刻は午後8時25分。

常盤台中学の学生寮の寮長は鬼のように怖いと友達から聞いたが、ウチの寮長は悪魔の様な人だ。

規則を破れば、その日の夕飯は抜き。しかも反省文を原稿用紙10枚も書かせる、鬼畜の極み。

つい破ってしまった人間は口を揃えて、


『これが人間のやる事かよぉぉぉおお!!』


と叫ぶ。

そう言えば三週間前に男と逢引をしていた者が、そのことが寮長にバレて、寮長室でカンズメされたらしい。そしてなんと長編恋愛小説を書かされたとか。因みに内容は失恋物。主人公の女は恋人に別れを切り出すそうだ。

幾ら三十路を過ぎて結婚していないわ、婚約者どころか彼氏もいないとしても、生徒に八つ当りは無いだろうと思う。

ともかく、彼女の寮には悪魔が住んでいる。

無論、少女もそんな悪魔の鎌に斬られたくない。急いで走り、全速力で寮へと駆ける。

―――この公園は寮までの近道なのだ。

虚数学区の噂よりも、あの寮長の罰の方が怖い。故に少女は走る。走る。汗をダラダラ掻きながら走る。激しく息を切らし、熱くなった肺と心臓の悲鳴に耐えながら。


「所詮、噂は噂よ。虚数学区の扉なんてある訳がない…」


そう強がっているが、彼女は『大能力者(レベル4)』。そんじょそこらの男連中より、何十倍も強い。虚数学区だろうが変質者だろうが、指先一つで叩き潰せる。

彼女の名は、釧路帷子(くしろかたびら)。

『量子変速(シンクロトロン)』と呼ばれる、簡単に言うとアルミを爆弾に変える能力を所持する能力者である。

目つき以外は、自分は美人だと思うが、やっぱり目つきが悪いせいで色々と大幅に損している……と思っている。

能力を駆使する以前に、その目つきで不良共が幽霊と間違えて逃げ散る始末である。………思っていると言ったが、やっぱり事実である。大幅に損しまくっている。

ああ、いや、そんな事を考えているよりも、今は両脚を前に出し続ける事だけを考えろ。

門限まであと3分。

寮まであと500m。

ギリギリだ。いっそ、アルミ缶を爆弾にして爆風で飛んでいきたいほど、ギリギリだ。


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