過去ログ - 吹寄「上条。その……吸って、くれない?」 part2
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54:nubewo ◆sQkYhVdKvM[sage saga]
2012/03/15(木) 02:04:06.15 ID:iLHIXR/Lo

「ごめん、怒ってる?」
「さあ」

チラリと、吹寄は上条のほうを見た。
それがいつも自分を苛立たせる上条の仕草と同じなのに、目線を合わせてから気付いた。
クラスの視線が自分達に向けられる中、その視線は、強固に絡み合って離れない。

「カミやん、そっちに姫神さんはおらへんよ。なんか保健室に行ったとか今聞こえてきたし」
「……」
「あの、上条ちゃん」

隣で小萌先生がこちらを不安げに眺めているのに対応せず、上条は吹寄のほうをジッと見つめた。

――これでも、まだ、秘密にするの?

吹寄の目が、そう言っているように聞こえた。
すっと視線が外されて、周囲の音を拒むかのように、吹寄がじっと机を見つめた。

「カミやん?」

吹寄を傷つけないために、上条は秘密にしようと提案したのだった。それがつい10分前に交わした約束だった。
改めて、この状況を見つめ直す。
もし立場が逆で、吹寄が他の男と交際しているという説が飛び交って、自分が蚊帳の外だったら?
真実は違うと自分は思っていても、きっと面白くない。どこかで吹寄を疑ってしまいそうな自分がいるのがわかる。
吹き寄せが今、苦しんでいるのはきっとそうなのだろうと思った。
このまま秘密を温め続けるのは、きっと吹寄を傷つけることになるのだろう。

「上条ちゃん、あの」
「先生。ちょっと、待ってもらえますか」

授業を、ではない。助け舟を出そうとしてくれるのを、上条は止めたかった。
この一見は、彼氏の自分が、解決しないといけないことだと思うから。
ガタリと、上条は立ち上がった。そして、ずっと俯く吹寄のそばに歩み寄った。

「上条?」

吹寄の後ろのクラスメイトが、怪訝そうに名前を呼んだ。
その声で気づいた吹寄が顔を上げ、上条を見つめた。

「制理」

クラスの皆が一瞬、戸惑いに口を閉じた。
上条が口にしたのが吹寄という女の子の下の名前だと理解するのに、少し時間が掛かったのだ。

「……何?」
「俺が言い出したことなのに、破って、ごめん」
「……貴方は、それでいいの?」

潤んだ目で、恨みがましく、吹寄は上条を見返した。ぎゅっと、後ろで組んだ手がスカートの裾を摘む。
その態度で、上条はむしろ決心を固めた。
安易にばらしてしまって吹寄を苦しめることになるとしたら、それは不本意だ。
……だけど現状がすでに、吹寄にとって居心地の悪い事になっている。
きっとこれからも、噂に翻弄されることはあると思う。
だけど、ちゃんと自分が想い、想われている相手は吹寄なのだと、はっきりさせることは、きっと悪いことではない。



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