過去ログ - さやか「黄金の……狼……」 牙狼―GARO―魔法少女篇 第二夜
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924: ◆ySV3bQLdI.[ saga]
2012/12/31(月) 23:53:30.31 ID:kS6KKwzDo

 男は女の希望そのもの。
 その希望が今、自身の手で、音を立てて壊れた。
 想像よりもずっと小さく呆気ない落下音。それだけに現実味を伴って耳に響く。

 下を覗く勇気もなく、金網を握り締めて放心していた女だったが、
やがて曖昧な足取りで左右に揺れながら一階に下りる。

 自分の目で確かめるまで信じない。
 もしかしたら、もしかしたら、まだ息があるかもしれない。
いや、男が事故に遭った日からすべてが悪い夢だったのかも。

 甘い期待は、玄関を抜けた瞬間に砕け散った。
 そこに転がっていたのは、物言わぬ姿になり果てた男。
血溜まりに横たわる恋人に、女は掛ける言葉を持たなかった。
 
 抱き起そうと後頭部に触れると、ぬるりとした感触。
 手にはめた白い手袋が、見る見るうちに赤く染まっていく。

 ようやく実感した。
 愛する者は死んだ。
 自分が殺したのだと。
 
 女は跪き、声にならない嗚咽を漏らした。
噛み殺した慟哭は低く、獣染みた唸り声にも感じられる。
 女は悲しむ以上に、恐れていた。

 男がいなくなったことを。
 その手に掛けてしまった事実を。
 そして、自身のこれからを。



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