過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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103: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:24:58.37 ID:h7sEMOtHo
呼吸さえ忘れて、切り結ぶ中で。
遂に、勇者の剣がワルキューレの防御を跳ね除けた。

大きく後方に弾かれた斧槍に引っ張られて、ワルキューレは体勢を崩し、無防備な姿をさらけ出す。
がら空きの胴へ向かい、左下段から引き起こすような軌道で切り上げる。
以下略



104: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:25:58.78 ID:h7sEMOtHo
身を二つに折って吐き気を押さえ込んでいる彼女の眼に、「赤」が飛び込んでくる。
下を向いた視界に、濡れた芝生に落ちる赤い雫が見えた。

勇者「やる、のか?」

以下略



105: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:26:37.87 ID:h7sEMOtHo
晴れ間の下、重い残響音が広がる。
どさりと何かが落ちる音が、二人からやや離れた地点から聞こえた。

空から降り注ぐ光の中、彼女は斧槍を失い、膝を折っていた。
勇者は切り払った姿勢のまま、彼女を見下ろす。
以下略



106: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:28:08.96 ID:h7sEMOtHo
勇者「ならばいい。さて………とっ!?」

ワルキューレ「?」

勇者「ちょっ……剣が手から離れない!」
以下略



107: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:28:59.71 ID:h7sEMOtHo
勇者「おお……」

堕女神「終わりです。もう、それは普通に扱えるかと」

勇者「何で最初っから解いて持ってこない?」
以下略



108: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:30:29.98 ID:h7sEMOtHo
堕女神「はい。……その前に、失礼いたします」

勇者「ん?」

彼女が口元に手を当て、掌へ息を吹きかける。
以下略



109: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:31:52.14 ID:h7sEMOtHo
ワルキューレは、堕女神に導かれるままに、城内を歩く。
雨に濡れた肌が、歩くたびに熱を奪われて寒くなる。
戦っている時は体の高まりによって相殺されていたが、終われば寒くて仕方が無い。
ふるふると震え始めるが、それを何とか隠そうと努める。
目の前を歩いているのは、自らの力を奪い、地下へと幽閉した存在なのだから。
以下略



110: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:32:26.84 ID:h7sEMOtHo
勇者が自室で着替えていると、ドアが叩かれる。
ノックの音にはどこか乱れがあり、三年間毎日聞き続けた彼には、それだけで違和感だった。

勇者「堕女神……か?入れよ」

以下略



111: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:32:53.06 ID:h7sEMOtHo
堕女神「……楽しんでおられましたね」

勇者「ああ、斬り合うのは久々だった。楽しかったよ」

堕女神「…ならば、何故『負けたかった』などと?」
以下略



112: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:34:36.05 ID:h7sEMOtHo
そこまで言いかけ、咄嗟に言葉を切る。
今の発言は……不用意、だった。

今の言い方では、彼が上位の「ワルキューレ」に比肩、いやそれ以上の力を備えている事になる。
普通ならば、それは誇るべき事のはずだ。
以下略



113: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:35:15.18 ID:h7sEMOtHo
勇者「酷く傲慢だろう。……軽蔑してくれ」

その言葉に、彼女の沈黙は更に長引く。
軽蔑の感情から、ではない。
諦念、自嘲、そして物悲しさをたたえた彼の顔を、見てしまったからだ。
以下略



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