過去ログ - 結「やっぱり桂馬君には敵わないよなあ」(神のみSS)
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79:1 ◆/5mmo/htMU[saga]
2012/04/07(土) 21:23:51.41 ID:AfM0/nRk0


「………スコーンを3つ、戴けませんか美生様」

しかし私の言葉を聞き終える前に、森田は優しい声で私にそう言った。私は少し呆気に取られたが、いつまでもこうして
いるわけにはいかない。軽い自己嫌悪に陥りながら、私はスコーンを袋に詰めてレジに向かった。

「480円になります……」

「はい。では500円で」

「20円のお返しです。ありがとうございました……」

お釣りを支払って、森田が店の外へ歩き出す。待って、行かないで……。本当はそう言いたかったのだが、言葉が出て
来なかった。代わりに涙が溢れて来る。

「美生様」

すると私の思いが通じたのか、森田がドアの前で立ち止まった。そしてこちらを振り返らずに続けた。

「どんな境遇であっても、決して負けないで下さい。美生様は亡くなられた社長と奥様のご自慢の娘様です。そしてそんな
 社長にお仕えした私の誇りです。美生様なら、また上流階級に戻って来られると信じております。貴女はひとりじゃない。
 奥様も私もついております。だからあの頃の様に、いつまでも堂々としていて下さい」

森田は静かに、しかしはっきりとこう言った。私はそれが嬉しくて嬉しくて、「うん……、うん……」と涙を堪えて頷いた。

「バイトは何時に終わりますか?家まで送りますよ。ここは事務所の帰り道なんです。戻るついでですから代金は結構
 ですよ」

ここで森田が、昔よく見せた不器用な笑顔をこちらに向けて見せた。泣き顔を見られるわけにはいかない。今度は私が
背を向ける番だった。洟をすすりながら、必死に泣くのを堪えて強がってみせる。





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