17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/05/05(土) 12:25:04.97 ID:r7NxxgN10
五限目の、本日最後の授業が終わった。この後は、美国織莉子の言った通り、マミと彼女と、そしてあの小さな黒髪の子との共同戦線で魔女を狩ることになる。授業の間の小休止時間に彼女から入ってきたテレパシーによると、放課後、昇降口で待っていて欲しいとの事だった。
『そういえば、どうしてテレパシーが使えるのに授業中に話しかけて来なかったの?』
『だって、急に頭の中に声が響いたらびっくりしちゃうでしょう』
『それは、そうだけれど……だったら、授業の合間にでも話しかけてくれれば良かったのに』
『……私にも都合がある、ということよ』
その「都合」がどんなものなのか、当時の巴マミには分からなかった。もしかしたら、まるで酸を垂らしたように彼女の周りにだけ人が寄り集まらないこの現状と、何かしらの関連があるのではと考えて、思い直した。誰しも、探られたくない過去の一つや二つはある。それが些細な悪戯なのか、あるいは社会の中で生きていけなくなるほどのおおごとなのか、それは人に依るのだろうけれど。
マミは、古文などという現代社会を生き抜くのに全く必要が無いと思えるその教科書を鞄に仕舞い込むと、まるでそれが義務であるかのように周囲の人に笑顔と挨拶を振り撒き、教室を出た。当然、クラスメイトの仲間たちは挨拶を返してくれる。さようなら、巴さん。また明日、と。
そんな言葉のやり取りがあるだけで、巴マミの心は綻んだ。こちらへと向けられる笑顔。当然の事としてなされる挨拶。それが、ああ、自分はこのクラスに属しているのだ、という安心感に繋がる。
マミは、魔法少女だ。一般人が持ち得ない異能の力を行使し、ばけものと戦う事を使命付けられた、言葉の響きからは想像もできないほど過酷な宿命を背負わされた戦士。それでも、こうやってクラスメイトと気兼ねなく話したり軽く挨拶を交わすと、自分には仲間がいるのだと、張りつめた心が和らぐのだ。そして、その仲間を守るためならば、マミは自分がどこまでも強くなれる、そんな気がした。
だからきっと、マミが常日頃から感じている「疎外感」などというものは。そう、きっと。
きっと、ただの勘違い、思い違いに過ぎないのだろう。
窓の外を見れば、空は青く、まだ日は高い。これから数時間をかけて魔女を探し、そして撃破しなければならない。それもすべて、皆のため、見滝原の平和を守るため。そう、自分に笑いかけてくれる、仲間たちのために。
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