4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)
2012/04/24(火) 16:55:28.63 ID:D+xZ8dty0
「先生、私の席はどこでしょうか……?」
場の空気にすっかり中てられ何も言えずにいる教師に、織莉子は問う。慈母のように柔らかな笑みを湛えて。
「え、ええ。えっと、最後列の左端ね。黒板から遠くて不便があるかもしれないけれど……」
「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
教師へと僅かな会釈をして、教室の端を通って席に着く。歩く姿も、ただそれだけだというのにとても優雅だった。
「えー、気になっている人もいると思います、美国さんの制服についてですが。あと1年だという事で特例的に前の学校でのものの着用が許可されています。みなさん、一日も早く美国
さんが学校に馴染めるよう、親切に、接してあげください。では、今日のホームルームはこれでお終いです!次の授業は――」
着席した彼女は、両手の指を絡めて、やはり微笑んでいた。貼り付けられたものではなく、正真、心の内から湧き出るかのような、ごく自然な笑み。こんな状況下だというのに微笑みを絶やさないでいる彼女に、逆にマミはとても不安な気分になった。
彼女はまさにパーフェクトだった。
1時限目の数学、2時限目の英語、3時限目の体育。それら全てで、美国織莉子の実力は恐ろしいほどに発揮されたのだ。
嫌がらせのようなしつこさで指名された、明らかにこの時期にやるべきでない発展問題を、彼女はほとんど即答と言うべき速度で回答してのけた。英語の長文問題をなめらかな発音で朗々と読み、奇怪としか言いようのない文法も解して説明してみせた。なによりも凄まじいのは体育で、弾き出した数字は一応常識の範囲内ではあったものの、その動きの優雅さは人体の動きの一つの完成型を見ているかのような美しさだった。
一般人とは思えないほどの能力を発揮する織莉子を前にして、いったい彼女は何者なのだろうかと、巴マミは頭を悩ませざるを得なかった。
彼女が魔法少女である可能性は、もちろんある、というよりも、むしろとても高いと言えるだろう。
魔法少女は、魔翌力で身体のあらゆる部分を強化し、その能力を極端に向上させることが出来る。たとえ魔法少女の姿に変身していなくとも、それは可能だ。だから、もし彼女が魔翌力で身体能力を向上させているとするならば、彼女の人並み外れたスペックも説明がつく。
もっとも、魔法の使用による魔翌力波動の空中拡散が感じられないために、以て彼女が魔法少女だと断じるのは早計に過ぎるとマミは考えた。よって、今のところその判断は保留されることとなった。
それに、もし彼女が魔法少女だったなら。
いかなる意図を持っての事であれ、いずれ彼女の方から接触してくることになるだろう。それは、マミにだって分かる事だった。
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