92: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:10:54.19 ID:yIkrPX16o
そうこうしているうちに、追加の魔法少女たちが現れた。
キリカに致命傷を浴びせた巴マミと、隣町を縄張りとする佐倉杏子、織莉子自身がそそのかして契約させた千歳ゆまの3名だった。
4対二、方やベテラン3人に回復能力特化型魔法少女の組み合わせ、方や契約して一月も経っていないルーキーが二人。
彼我の戦力差は明らかだと言えるだろう。下手を打てばリンチにすらならない。
4対か、とキリカが言う。
「いや、巴マミ1人にも勝てなかった私は足手まといかな」
そんなことはない、と織莉子は声を大にして叫びたかったが、ここ語りはキリカに任せることにする。
今更何を言った所で、キリカの命はもうどうにもならないのだから。
そうとも、今日は私たちの、一世一代の晴れ舞台なのだ。
「――魔法少女のままじゃね」
にやり、とキリカが笑う。
怪訝な顔をする対峙者4名。
織莉子もまた、キリカの方を見遣る。
「キリカ……!」
キリカは、心配しないで、と言う風に微笑むと、
「そろそろだ、織莉子。もう私は、結界が張れるくらい"引っ張られて"いるんだからね」
いよいよ、最期の時だ。
キリカは息を吐く。
「大丈夫、私は何になっても織莉子を傷つけたりはしない。
――いや、むしろこうなることでキミを護ることができるならば」
キリカの腰に位置するソウルジェムが宙へ跳ぶ。
いったい何が始まると言うのだ、と驚く4人。もっとも、うち一人は別のことに驚いているようではあったが。
――私は、安らかに絶望できる――。
それが、呉キリカという"魔法少女"の最期の言葉だった。
キリカの菱型のジェムは砕け散り、魔女が生じる。
マネキンの胴体をいくつもくっつけたような乳房がいくつも並んだボディに、のっぺらぼうの顔。
大きなシルクハット風の帽子を被っていて、そこにくっついたでっかいリボンの中心には、単眼の目玉がぎょろりと据え付けられている。
/――使い魔の魔女
一人の少女に仕えるために生まれた魔女。
彼女は常に少女のために在る。その存在意義は少女と共に在る。
この魔女を斃したければ、少女をその手に掛ければ良い。
存在意義を失くした魔女は、瞬く間に消え失せるだろう――/
なんだ、と織莉子は微笑んだ。
何を心配することがあったろうか。キリカは、ここにいるではないか。
自分を守るために、魔女になってもまだここにいるではないか。
「キリカ、真に絶望するのは貴女じゃない。真実を知った彼女たちよ。」
ありがとう、キリカ。愛している――。
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