91: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/07/17(火) 04:10:23.73 ID:yIkrPX16o
翌日の朝、織莉子とキリカは市立見滝原中学校――鹿目まどかの通う学校――の放送室をジャックした。
魔法少女としての身体能力があれば、変身などしなくとも一般人風情を制圧するなどは容易いことだった。
織莉子は演説をする。
この学校に在るすべての人に向けて。
この学校のどこかにいる、鹿目まどかに向かって。
*
皆さんには、愛する人がいますか。
家族、友人、恋人、心から慈しみ自らを投げうってでも守りたい人がいますか。
そして、その人たちを守るに至らぬ自分の無力を嘆いたことはありますか。
世界は危機に陥っています。
絶対的な悪意と暴力、それが形成したものが降りようとしています。
しかし、私は戦う。
来るが良い、最悪の絶望――。
*
刹那、キリカの背から瘴気が溢れ出る。
魔女の結界が学校全体を包む。
どこかからか生じたキリカの使い魔たちが、生徒たちを襲いくる。
ああ、これこそがキリカの生きたあかしだ。
自分に尽くす、キリカの意志そのものだ。
今キリカは、世界に刻み込んでいるのだ、彼女が織莉子に尽くしているという事実を。
それは今の織莉子には、とても素晴らしいことのように思われた。
結界の中には、二人分の椅子があしらわれた。
それはどこをどう見ても墓碑そのものだった。
なんだ、キリカ、ちゃんと分かってるじゃない。
ここが私たちの死に場所となることが――。
先ず最初に現れたのは、黒い長髪の魔法少女だった。
彼女のことを、織莉子は知っていた。世界の終末にいつも立ち会っていた子だ。
悲しみと、悔しさと、諦観と、様々な感情がない交ぜになった表情をしてあの場所にいた、1人の魔法少女だ。
不思議だった。
大体にして、未来というものは流動的だ。
終着点は変わりはしないものの、あの逆さま魔女と対峙する者たちの面子はかなり変動していのがその証左だ。
だが彼女だけは、いつも変わらずそこに在った。まるでそれが必然だとでも言うかのように。
話し合う振りをして問答無用の先制攻撃を仕掛けていた彼女の魔法を見て、織莉子は合点がいった。
ああ、この子はすでにあの場所を通過しているのだと。
この子は、繰り返しているのだと。
織莉子は彼女に宣言する。
世界の終焉を齎す鹿目まどかを排除する、と。
どうやら鹿目まどかに執着しているらしい彼女とは、当然のこととして戦闘になった。
この子の能力は時間停止だった。
それは織莉子の未来予知と、キリカによる極時間遅延領域を設けることで対処可能だった。
とは言え、キリカの延命のためにグリーフ・シードのストックは全て使い切ってしまっていたので、二人同時に魔法を行使するという消耗は出来る限り避けたいことだった。
見れば、紫の魔法少女は時間停止を発動する際に左手の盾に触れる必要があるようだ。
そしてありがたいことに、その主兵装としての銃撃を接射にて放つことはない。
さすがに接射では、キリカの魔法と言えども対処は不可能だからだ。
戦闘時につきそのことについて深く考える余裕はないが、少なくともわけも分からず葬り去られる心配はないようだった。
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