過去ログ - 青子「……」有珠「……ひどい」草十郎「……ごめん」
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93:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/26(土) 22:23:44.39 ID:l6lpwwcP0






 あれは高校1年のことだった。
 恋をした。
 胸の内は相手にはもちろん、友達にさえ語ることのできない、鬱屈した思いに閉じこめられた苦しい恋だった。
 その青年は凄烈だった。
 彼の傍に近づくために金鹿は、必要もない生徒会室へと何度も足しげく通った。
 後ろ姿を痛切な思いでみつめるだけがすべての、切ない恋だったのだ。


 彼に熱っぽい視線を注ぐのは、金鹿だけではなかった。
 年代が近いこともあって、彼は女生徒達の人気を集めていた。
 進路指導やら人生相談やらの名目で、彼女達は生徒会長を差し置いて、何かとその彼の元を訪れた。


 放課後の生徒会室はもとより、彼が勉強のために訪れた図書室や、自宅にまで押しかけ、
 彼の消しゴムを貸してもらったとか、生徒会室室でインスタントコーヒーをごちそうになったとか、
 他愛のないことが女子生徒たちの自慢の種になっていた。


 そのうち、ごく親しくしていた友人の一人が、私に打ち明けた。
 生徒会室に行って、部活費の相談をしているうちに、恋人になってくれないか、と言われた。
 あたふたしている間、熱い視線を注がれ、やがてそれが終わると「ありがとう」と抱き締められた、と。
 取り巻きの一人として、女生徒達の一番外からひっそりあこがれの視線を向けていた金鹿が、
 生徒会室に行ったのは、その週の土曜日だった。



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