268:律「うぉっちめん!」[sage saga]
2012/11/05(月) 23:50:43.01 ID:/rmU2Htl0
律「クソッ、離せっ!」
紬「うん、わかった」
次の瞬間、紬は梓ら二人の方へ、律を投げつけた。
放物線を描いて数mの距離を飛ばされる律。最早、人間業ではない。
律「うぐうっ!」ドサッ
二人の足元に頭部から着地した律は、くぐもった悲鳴を上げた。
澪「律!」
梓「律先輩!」
梓は慌てて律を抱き上げた。かろうじて意識はあるようだが、眼は虚ろで口はだらしなく
開かれている。明らかな脳震盪だ。
澪もまたしゃがみ込んで律を気遣う。そこにはもう、以前の確執は感じられなかった。むしろ、
敵意は紬に向けられた。彼女の醸し出す異質な恐怖に当てられ、肩を震わせてはいたが。
澪「ムギ、お前には失望したぞ……!」
梓「もう私達はすべてを知ってます。証拠だって揃ってるんです」
梓は澪の手から書類の束をひったくると、紬へと突きつけた。
梓「どうして、こんな事をしたんですか!? 何がムギ先輩を変えてしまったんですか!?」
紬「……私は何も変わっていないわ。変わっていってしまったのは、あなた達みんなの方よ。
それもずっと前に予想出来ていた事だけど」
そう言いながら、溜息交じりに椅子に腰を下ろし、脚を組む。
チラリと眼を遣ったコーヒーは既に冷えていた。
紬「誰かが…… いいえ、他でもない私が放課後ティータイムを守らなければいけない。
そう思ったの。デビューして、すぐに」
梓「守る……?」
紬「そうよ。たとえバンドが成功したとしても、いずれマスコミの餌食にされる。彼らは
自分以外のすべてを食い物にし、大衆を惑わせ、巨万の富を得る。そんな化物の手から、
放課後ティータイムを守らなければならない。だから、私は決心したわ。バンドを脱退し、
琴吹グループの会長となる事を。そして、放課後ティータイムを守る為に、その権力を以て
世界を見張る監視者になろうと」
澪「結果、成功した私達の影の部分を嗅ぎつけ、スキャンダラスに書き立てようとする
マスコミはいなくなった……」
澪に眼を向け、無言で頷く紬。
梓「待って下さい! あの時は……? 2014年の大晦日、唯先輩と私の路上ライブの時は
どうなんですか!? 唯先輩はひどいバッシングを受けたじゃないですか!」
紬「あの時はまだ私の力が足りなかった。マスコミ、司法、政財界。すべてを抑える為には、
もう少しだけ時間が必要だったの。だけど、程無くマスコミは掌握出来た。更に警察と
暴力団。最後には、財界と一部の政界も。それからは完璧に放課後ティータイムを守れる
ようになったわ」
梓「……!」ピクッ
紬の言葉が引き金になったかのように、梓の感情に火がついた。
梓は律を床に寝かせると、握る拳を震わせながら立ち上がった。眼は涙で潤んでいる。
梓「何が放課後ティータイムを守るですか! ムギ先輩はいなくなって、唯先輩はボロボロに
なって、私達三人も……」
紬「……プロデビューしてすぐに気づいたわ。唯ちゃんと澪ちゃん、二人の性格、二人の才能、
二人の音楽性。お互いが同じバンド内では相容れない存在になる。少なくとも、唯ちゃんに
その気が無くてもね」
澪「……」
紬「だから、あえて元の形を保たせようとは思わなかった。私の使命は放課後ティータイムを
守る事であって、メンバーの五人を守る事じゃない。私のバンドでの役割は初期に在籍
していた元メンバー程度でかまわない……」
澪「役割……?」
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