25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/24(木) 21:46:31.85 ID:t/gaNw6Qo
「それで先輩にいろいろ女神スレのこととか教わったりパソコンを選んでもらったりしているうちにね、あたし何か、先輩に女さんとお兄ちゃんの話をすることなんかどうでもよくなってきちゃって」
え? 僕はその時妹の言葉に驚いた。僕のことを好きになったのは本当だとしてもその根底には妹の兄君への執着があることについては僕はこれまで疑ってさえいなかった。一番僕にとって望ましい事態は、妹が兄君を助ける同志としての僕を好きになることであって、僕はそれ以上の
ことを考えたことすらなかったのだ。一番最悪のパターンは妹が僕を利用するために僕を好きになる振りをすることで、次に悪いのは陽性転移だった。そんなことを考慮すれば、たとえ目的を同じにする同志としての愛情であっても僕にとってはそれは充分すぎる答えだった。
「その頃からかなあ。あたし自分でも何を悩んでいるのかよくわからなくなちゃって。お兄ちゃんのことを考えてたはずなのに、先輩ってあたしの話を聞きながら何を考えてるんだろうってそっちの方に悩むようになっちゃった」
陽性転移を発症したクライアントは傾聴者が何を考えているのか知りたいなんて思わない。彼女たちが傾聴者に恋するのは傾聴者の中に写った自分に恋をしているのだ。その恋はクライアントにとっては自己愛と同義といってもいい。自分を唯一認めてくれ自分に関心を持ってくれる相手としての傾聴者だけが、クライアントにとっての恋愛対象ということになるのだった。
妹の話はそれを真っ向から崩すものだった。妹は僕が何を考えているのか知りたいという気持ちを抱き、そしてそれが僕への恋愛感情に転化していったようだ。かつて僕の人生の中で唯一僕のことを好きだと言った女でさえ、僕を好きな理由は僕が彼女のことに関心を示し彼女の話をひたすら聞いてくれる相手だったからだった。僕は彼女の承認欲求を満たしてあげる一点だけで、彼女の中で特別な存在でいられたのだった。
でも妹は僕自身に関心を抱いてくれた。そう言えばさっき、妹に愛情を示された僕が気を遣って女と兄君を別れさせる作戦を披露してあげようとした時、どういうわけか不機嫌になった妹の言葉が心に思い浮んだ。
「何でこういう時にそんな話をするの? そういうのは明日学校ですればいいじゃない」
僕を睨む妹の表情。
「今はもっと違うお話を先輩としたかったのに」
そうだ。もう勘違いではなかった。僕には今度こそ本当に僕のことを心か愛してくれる彼女ができたのだった。
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