737:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/29(金) 15:17:01.81 ID:M4GDL18io
冬休みの二日目を、俺は眠って過ごした。怠惰であることはとても大切なことだ。
ときどきみんな忘れてしまうけれど、一生懸命であることは別に素晴らしいことじゃない。
素晴らしいことは大抵、一生懸命にならなければ手に入らないというだけで、一生懸命それ自体が重要なのではない。
738:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/29(金) 15:17:33.99 ID:M4GDL18io
俺の頭は前日のアキからの電話に支配されていた。
だから、タカヤと「みー」のその後の顛末のことは、モスからの電話があるまですっかり頭から抜け落ちていたのだ。
モスから電話が来たのは一時半。俺が二度寝から覚めて、ベッドでごろごろとし始めて一時間近く経った頃だった。
739:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/29(金) 15:19:06.84 ID:M4GDL18io
タカヤの話が一区切りしたあと、不意にモスが深刻そうな口調になった。
「……なあ、なにかあったのか」
「なにかってなんだよ」
740:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/29(金) 15:20:22.66 ID:M4GDL18io
階下のリビングに降りると妹がこたつで眠っていた。よく寝る奴だ。一時を過ぎているのに。
俺はコーヒーメーカーを動作させた。こぽこぽこぽ、とよく分からない音がリビングに響いて、独特の香りが部屋に広がった。
できあがるまで、椅子に座って目を閉じていた。すると不思議な気持ちになる。
741:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/29(金) 15:20:51.02 ID:M4GDL18io
出かけようか、と俺は言った。どこに? と妹は訊き返す。俺は言葉に詰まった。行きたい場所なんてどこにもなかったのだ。
「なにかあったの?」
742:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/29(金) 15:21:17.13 ID:M4GDL18io
で、出かけることになった。特に目的もなく。このあいだもこんなことをした気がする。
いつものように街に出る。人通りの多い道。その中で、言葉も交わさずに二人で歩く。
外は寒い。クリスマスシーズン。冬休み。なんとなく落ち着かないような気配。
743:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/29(金) 15:21:45.23 ID:M4GDL18io
「ねえ、なにか考え事?」
妹は、妙にはしゃいだ口調で言った。
744:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/29(金) 15:22:11.43 ID:M4GDL18io
「なんか、どこにも入りにくいね」
「そうかもね」
745:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/29(金) 15:23:08.95 ID:M4GDL18io
けれど公園に未来予知の犬はいなかった。人一人いなかった。
この寒さでは当然だろう、と、俺は白い息を吐き出しながら思う。
俺はベンチに座る。妹は背の高い鉄棒を掴んで体を浮かせた。
746:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/29(金) 15:23:35.63 ID:M4GDL18io
失われた俺の中の指向性。俺は何をこんなに悩んでいるんだろう。
たぶんそれは、いま、俺の目の前で、冬の寒さに少しだけはしゃいでいる妹の姿と、無関係ではないのだろう。
このままでは、やっぱりだめなんだろうか。
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