933:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/10(火) 15:34:02.37 ID:frJK78Ono
「兄さん」
と彼女は言う。
不安そうな顔をしている。何故そんな顔をするのか、俺には分からない。
934:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/10(火) 15:34:33.31 ID:frJK78Ono
不意に妹の手のひらから力が抜けて、離れていきそうになった。俺は咄嗟にそれを握る。
妹は驚いたようにこちらを見上げた。俺は視線を逸らす。
何をやってるんだ。
935:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/10(火) 15:35:00.62 ID:frJK78Ono
言葉が途切れる。俺は手を放した。
妹は何かを言いたげにしていたが、そのまま手を下ろしてぶらぶらと揺する。
公園を通り過ぎるとき、不意に何かの気配を感じた。物音。
936:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/10(火) 15:35:33.84 ID:frJK78Ono
俺はしゃがみこんで犬の頭を撫でた。いったいどうしてこんなところにいるのか知らないが、寒くはないのか。
犬は俺の頬をぺろりと舐めた。ざらついた舌の感触。
937:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/10(火) 15:36:00.07 ID:frJK78Ono
しばらくすると飽きてしまったのか、犬は公園を走り去ってしまった。
俺は溜め息をついてベンチに腰を下ろす。
「なんだったんだろう」
938:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/10(火) 15:36:44.31 ID:frJK78Ono
「ごめんね」
と彼女は謝った。
939:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/10(火) 15:37:12.02 ID:frJK78Ono
妹は取り繕うように言った。
「だから、ごめんねって言ったでしょ」
940:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/10(火) 15:37:47.22 ID:frJK78Ono
「兄さんが悪い!」
「……なぜ俺」
941:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/10(火) 15:38:14.41 ID:frJK78Ono
「わたしを混乱させてばっかりの兄さんが悪い!」
「……待て。心当たりがない」
942:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/10(火) 15:38:40.34 ID:frJK78Ono
「もうやだ! 帰る!」
なかば叫ぶようにして、妹は公園から出て行った。その姿がさっきの犬にダブる。
……まさかこの姿を予知していたわけではないだろうと思いたい。
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