322:空っぽの境界[saga]
2013/02/08(金) 23:43:02.33 ID:rTuRyC5r0
ほむらは空っぽについてもう一度考えた。
魂を失っても魔法少女は、なお空っぽではない。
なぜなら、精神も肉体もそこに残っているから。
しかし―――ほむらは鹿目まどかについては、やはり当て嵌まりはしないだろうと思う。
彼女の肉体は消失してしまっており、魂や精神すらもはや残っているはずがないだろうからだ。彼女の言うところの空っぽに、彼女は既になっているのだ。
ならば、本当に零になってしまった目の前にいる彼女は、一体何者だと言えるのか。
「私はマドカだよ。―――鹿目まどかが概念になって消えた魂の後に残った存在に在ったもの。鹿目まどかの存在そのもの。本質――――って、誰かが言ってたかな。
鹿目まどかの魂も精神も肉体も、全てこの世の理から外れてしまった……。けれど、唯一この世界に残っていたのは、彼女が居たという"存在≠セった。あなたがいたから、彼女の存在というカラは消えることなくこの世に留まり、その結果私が生まれたの。鹿目まどかが本物の空っぽになるのは、ほむらちゃんというカラが無くなった時だよ」
それは違う、とほむらは思う。
ほむらはほむらであり、まどかはまどかだ。
他人の存在がその人の外側になることなど有る筈がない。
まどかの最後のカラは、きっとほむらが身に付けている赤いリボンに他ならないのだろう。
それこそが鹿目まどかが存在していたという、唯一の証なのだから。
しかし、ほむらはそれを口にしなかった。
「ほむらちゃんが、私の最後の外側なんだよ」
彼女は懐かしい笑みを浮かべた。
「――――私が、あなたの境界なのね」
…
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