470:幸せの味[saga]
2013/07/01(月) 23:54:15.33 ID:zo/zVMQg0
「なんなんだよこれは! これが定食だって言うのかよ!」
しかし女は、悪びれる様子はなくカラっと答える。
「うん。お昼から作ってたんだ」
「昼のうちって、なんでそんな準備を?」
「なんとなくかな」
杏子には意味が分からない。
この女が何を思ってケーキを作るためだけに昼は店を閉め、夜にそれを振る舞っているのか。
ケーキのみを客に提供し、定食と言い張れるのか。
女はニコニコと、早く食べてくれないだろうかと催促するように、杏子をじっと見つめる。
考えてみれば、今は夕食を食べた後にデザートというのなら悪くはない。
流石に二食分一度に食べきれるかどうかは、杏子にも怪しいところだった。
それを見越してケーキを出したのではないかと思うほどである。
怒っているのもなんだか馬鹿らしくなり、杏子は改めてケーキに目をやる。
バニラとチョコの香りが鼻孔をくすぐり、肺の中まで甘ったるくなれば、体中にヘモグロビンを通じて甘味が駆け巡る。
たまらずフォークで一刀、先端部分を切り取り、そっとフォークの腹に乗せて口に運ぶ。
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