773:ぱるぷん手[saga]
2014/06/08(日) 15:31:59.36 ID:yCz6151q0
「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!」
「…………」
「…………」
「…………い、今でも徐々に記憶は変わりつつ――」
「いやちょっと待って。今の何?」
学校の近くから男子の悲鳴が響いてきた。
登校する生徒たちのざわめきが激しくなり、私と美樹さやかの間を幾人も通り過ぎていく。
自分の魔女が消えてしまい、記憶が薄れているはずの彼女ですら困惑している。
なんだというのだろう。
「おいなにがあったんだ?」「二年の男子が突然穴に落ちたらしいぜ!」「やだこわーい」「落とし穴ってこと?」「地盤沈下じゃね?」
誰かが穴に落ちたらしい。
それにしても、なんとタイミングの悪いことだろう。
おかげで歪みの修正がうまくいかなかったじゃない。
「ひょっとして、あんたがなんかしたの?」
「そんなわけないでしょう。私はあなたの記憶を人として生きていけるようにしてあげようとしただけよ」
「余計なお世話だ! あたしは……あたしは……たしかに、もっと大きなものの存在の一部だったはずなのに、それが何なのか思い出せない……」
どうやら焦ることはないらしい。
時間をかけながらも次第に彼女が外側の力と繋がっていたことさえ忘れて、違和感すら感じなくなり、普通の魔法少女としての人生を歩むことでしょう。
百江なぎさは既に円環の理としての自我を失っている。
気にすることはない。
「だとしても、これだけは忘れない……暁美ほむら、あんたが悪魔だってこと」
「せめて普段は仲良くしましょうね。あまり喧嘩腰でいると、あの子にまで嫌われるわよ」
もっとも、慣れ合うつもりはもはやない。
結局のところ、そうやって何度も失敗をしてきたことをいい加減学ばなければならない。
べしゃり、と頭に冷たい何かがぶつかり、ぬるりとした液体が頬を滑る。
青臭いトマト独特の香りが鼻孔を突く。
魔女に成り損なった私の使い魔たち。
何が言いたいのか解らないけれど、こんな格好で学校に行くわけにはいかない。
魔女のいない世界にいる使い魔もまた歪んだ存在であり、彼女たちに汚されたこの顔もまた歪みの一部と言えるわね。
私はその手を鳴らした。
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