24: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:12:23.45 ID:bzATqBdvo
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夕食を終えてお風呂に浸かっていると、
昼間何を考えていたのかわからなくなりそうだ。
25: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:13:15.81 ID:bzATqBdvo
晩御飯を食べる、お風呂に入る、勉強に取り掛かる。
受験が終わるまでこのリズムは崩さないだろう。
合格するために勉強する、第一志望に合格しみんなと離れ離れになる。
まるで一人になるために勉強してるみたいだ。
26: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:13:50.19 ID:bzATqBdvo
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たまには一人で勉強するのもいいものだ、教室には人一人居ない。
オレンジ色が教室を染めている。椅子、机、教壇、それに私。
幻想的ではないけれど心が落ち着く。
27: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:14:19.21 ID:bzATqBdvo
「もうすぐ卒業だね」
何気なく話し掛けた、この時期の学生はそれが挨拶だという風に。
彼女は「そうね」と軽く言いまた用意に戻った。
28: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:14:50.15 ID:bzATqBdvo
思わず棘のある言い方をしてしまったが、もう取り消せない。
「風子?」
和ちゃんの声が変わった、いつもの様な明瞭とした声ではない。
29: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:15:24.60 ID:bzATqBdvo
「そう、だったの……」
ようやく和ちゃんが口を開いた。
沈黙に耐え切れなかったのだろう。
それは私も同じ事で、話を続けずにはいられなかった。
30: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:16:36.15 ID:bzATqBdvo
「ごめんねこんな話しちゃって、迷惑だったよね?」
「そんなことないわよ。他の誰かに話した?」
私は目を閉じてうつむいて、涙がこぼれないようにしていた。
31: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:17:11.58 ID:bzATqBdvo
「……ごめんなさい風子、私は何も言えないわ。寂しいのは一緒だもの。
生徒会長失格ね、友達一人励ませないなんて」
――和ちゃんも私と同じなんだ。
32: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:17:49.85 ID:bzATqBdvo
手の冷たい人は心が温かいと言われている。
――じゃあ和ちゃんの手はどうして温かいんだろう。
夕日は顔をひそめ、蛍光灯の明かりが教室を支配している。
33: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:18:21.64 ID:bzATqBdvo
長い沈黙のあと、最初に口を開いたのは私だった。
「私たちも、帰ろう」
「……そうね」
34: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:18:56.05 ID:bzATqBdvo
赤信号を見つめながら、意識は彼女の方に向いていた。
「風子、意外だと思うだろうけど、唯は案外しっかりしてるの。
試験勉強と平行して演芸大会の練習もしてたのよ。
あ、演芸大会ってのはギターの発表のことね」
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