11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/06/11(月) 19:53:09.21 ID:mM4hAfqU0
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澪は紙袋を手に、満身創痍の心を抱えて帰路に就いていた。
つい先程律から受けた拒絶の仕打ちは、
残酷なまでに澪の身体と精神を苛んでいる。
それが故に、錯乱したかのように余計な出費までしてしまった。
その出費が、今手にしている紙袋の中身だった。
紙袋には、向日葵を擬したピンズの他、鬘も入っている。
律達と別れた後に寄った雑貨屋で、パーティーグッズとして売られていた鬘だった。
目当ては向日葵をデザインしたピンズだったが、この鬘も澪の目にふと留まったのだ。
その質感と色が、律の髪に似ていた。
律の髪に比べれば随分と長いが、切る等の手を加えれば瓜二つだろう。
そう気付いた澪は、衝動的にこの鬘を買ってしまっていた。
今となっては、この鬘を律の髪型に擬して作り変える事に、何らの意味も見いだせなくなっている。
そもそも、向日葵がデザインのピンズを買うという目的からして、最早意味など無かった。
「何やってるんだろうな、私は」
自嘲気味に澪が呟いた時、その独り言に反応する声が前方から返ってきた。
「ん?あ、澪ねぇだ。どうしたの?」
声に釣られて目を向けると、聡の姿があった。
呆然と歩いているうちに、気付けば自宅の傍まで来ていたらしい。
「聡、か」
澪は呟くと、律から受けた話を脳裏に蘇らせた。
聡が余計な事さえしなければ、律がいちごと付き合う事は無かったはずだった。
聡はそのような澪の思いに気付く事なく、然も心配そうな顔で言葉を放ってきた。
「暗い顔して変な独り言呟いて、どうしたの?」
お前のせいだ、そう言いたい思いを澪は堪えた。
代わりに、探るように言う。
「ちょっと、ね。お前の姉に、フラれちゃってさ。
酷いよな、律は。新しい子と付き合うんだって」
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