過去ログ - P「お前の夢にはついていけない」律子「……そう」
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(神奈川県)
[saga]
2012/06/24(日) 22:39:49.17 ID:mPrEAa4Zo
「表面上は私の名前だとしても、実際にはそれを支えてくれたチーフやスタッフのお陰でしょ。そんな大きな顔出来ないわよ」
「ふうん」
伊織は納得したのかしないのか、生返事で返す。
再び律子はプレート取り付けに戻り、伊織に示してみせる。
「今度は?」
「いいんじゃない?」
「そう? なんか違うのよね……」
腕を組み、体を離し、プレートの位置を何度も確認する律子。
結局、なにか他人にはわからないようなことが容認できなかったらしく、彼女は再度それを取り外し始めた。
「ねえ、律子」
「ん?」
「伊織ちゃんはスーパーアイドルにふさわしい待遇を求めるわよ?」
しばし考え、律子は、それにうんと肯定の意を示した。
「そうね。伊織はそれでいいと思うわ」
「いいの? 意外ね」
「なによ。私がいつも怒ってるみたいな言い方。伊織が自制できるのなんてよく知ってるわよ。そうでなきゃ、水瀬のお嬢様が、あんな貧乏事務所
に我慢出来るはずないでしょうから」
「なによ。家が裕福なのは私のせいじゃないわ」
「そうね。それがわかってるからこそ、でしょうね。まあ、高級なものを知ってるってことは、伊織にとってプラスになってると思うけどね」
「ふんっ」
鼻を鳴らす伊織に、律子は妙に優しい声を出す。
「事務所のほうだって、頑張ってくれるアイドルにはそれ相応のものを提供したいって思ってるのよ。だから、伊織」
「わかってるわよ。本当のスーパーアイドルになれって言いたいんでしょ。あんたを越えるくらいの」
「いい答えだわ。花丸あげちゃう」
「ばかにしてるの?」
「そんなわけないでしょ……っと、出来た!」
律子は自信ありげに案内板を示す。伊織はうさんくさげな表情を浮かべて、それを見つめる。
「さっきと変わってるように見えないんだけど?」
「違うわよ! ほら、さっきより、右肩が二度上がってるの! これは、見る人が……」
「あー、はいはい」
律子が説明を始めようとしたときには、もはや伊織はさっさと歩き始めている。
ちょっと、伊織ー、という声が追いかけてくる中、彼女はエレベーターに滑り込んだ。
「まったく、あれがトップアイドルだったって言うんだから。わからないわよねえ……。ねえ、うさちゃん」
そんな軽口を叩きつつ、彼女の瞳は燃えている。
彼方を見つめて。
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