14:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:23:07.31 ID:n3CjMYIK0
特大スクリーンの向こう側では、顔面にアームパンチを叩き込まれたスタンディングトータスが、派手に転倒した。
変形したコックピットのハッチから、夥しい血が溢れ出す。スタンディングトータスに乗っていた奴は間違いなく即死だろう。
「くそっ、くそっ、くそったれっ、これで有り金全部スっちまったっ」
汗ばむ掌のチケットを握り潰し、冴えない顔色をした中年の男が悔しそうに地団太を踏む。
僅かに残っていた気力も萎えていった。乾いた唇から青い吐息を吐き、男が力なく肩を落とす。
「おい、おい、どうしたんだい、とっつぁんよ。辛気くせえ顔してよ」
後ろから声をかけられ、ムッと不貞腐れた顔を浮かべ、男が振り返る。
「どうしたもこうしたもあるかッ。大穴狙いで新米のボトムズ乗りに金を賭けたらよ、たったの一分で全財産が水の泡さっ」
葉巻をくゆらせ、コブラが肩をすくませて答えた。
「そいつはご愁傷様だな、まあ、元気出せよ。その内良い事もあるさ」
「そうだといいんだがな」
「なんなら、とっつぁんよ。次の勝負は俺に賭けてみな。たっぷりと儲けさせてやるぜ」
中年男が胡散臭げにコブラをじろじろと眺めた。
「お前さんがだって?」
「ああ、そうさ」
男がコブラの身体つきに気付く。
なるほど、肩幅は広く、がっしりとした筋肉に覆われた身体は素人から見ても鍛え抜かれているのがわかる。
厳しい戦場を渡り歩く歴戦のワイルドギース──大方そんな所だろうと中年男が検討をつけた。
「いいだろう。お前さんの言葉を信じよう。次の試合はお前さんに賭けるとするよ。だがな、ここで一つ問題があるんだ」
中年男が声を潜めて、コブラの耳元に呟く。
「問題だって、何の問題だ?」
「オアシの問題さ。なんせ有り金全部突っ込んだせいで、一ギルダンも持ち合わせがないんだ。
これじゃあ、賭けたくったって賭けられねえ」
中年男の話に耳を傾けていたコブラが、なるほどねと、カールされた金髪をぽりぽり掻いた。
「いいだろう。俺がとっつぁんに少しばかり貸してやろう」
コブラの申し出に中年男がいやらしく、相好を崩す。
「へへ、すまねえな」
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