43:S・エルロイ
2012/07/03(火) 00:34:57.81 ID:5rYqMdO90
湿気と埃を含んだ黴臭い熱風がバザールの通りを吹きぬけた。
建物の陰に入ると地べたに座り、ストリートチルドレン達が午後の熱気をやり過ごす。
トミーが飴玉の袋をストリートチルドレン達に差し出した。子供達がわっとトミーの周りに群がる。
崩れたガーゴイルの像、教会とは呼べぬ教会の路地裏、薄暗い袋小路、そこははぐれ者達の隠れ家だった。
空になったキャンディーの袋を投げ捨て、トミーがイプシロンの傍らに座り込む。
「これ、残りの金だけど」
トミーがギルダン金貨の詰まった財布をイプシロンの目の前に差し出した。
差し出された財布を手で遮り、イプシロンがトミーにいった。
「トミー、その金はお前が持っていろ」
「でも、ダンの奴を片付けたのはあんただ。この金はあんたのもんだ」
「俺に金はいらない」
「あんた、変わってるなイプシロン」
懐に財布を入れ、トミーがイプシロンを見返した。黒く濁り、熱を帯びた輝きを放つイプシロンの無機質な瞳。
トミーはストリートチルドレン達のリーダーだ。親も家も無い孤児達の面倒を見ている。
トミーはひょんなことから袋小路に居座り始めたイプシロンと知り合い、今では寝食を共にしていた。
とはいっても、イプシロンは食事はしない。眠りもしない。何故なら彼はサイボーグだからだ。
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