過去ログ - 梓「サナララ」
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20:猫宮[saga]
2012/07/29(日) 18:13:59.66 ID:G1XGi7PY0
「冗談だよ、冗談。
でも、練習に夢中になって、澪に構えてなかったのは本当だしさ。
多分、生暖かい空気も気のせいだろ。
ひょっとすると、汗が耳にでも入ったのかもな。
ま、そんな事はどうでもいいや。
私の練習ばかりしてても仕方が無いし、次は澪のベースの出来を見てやるよ。
エアベースでさ、今から弾いてみろよ」


「ここでっ?」


「何だよー。
もうすぐ学祭なんだから、開けた場所での練習もしとかなきゃだろ?
心配しなくても、大丈夫だよ。
今の所、公園に居るのは、あのベンチに座ってるツインテールの子くらいだろ?
一人くらいの観客には耐えられるようになっとかなきゃな」


「ううー……、それはそうなんだけどさ……」


「ほらほら、ファイトファイト!」


殴られたというのに、澪さんに対する律さんの対応はとても優しかった。
きっとそれがあの二人の関係なんだろう。
からかわれても、殴られても、それでもお互いを許し合えて、尊重し合える関係。
傍から見るだけでそんな二人の関係が強く感じられる。
私もあの子とそんな関係になりたかった。
離れていても信じ合える関係で居たかった。
受験が終われば、あの子とまたそんな関係を歩んでいけるんだろうか……?

……ううん、そんな事より、今は考えなきゃいけない事がある。
律さん達から少し離れて申し訳なさそうに頭を下げている平沢さんに、私はゆっくりと視線を向けた。
その視線に気付いたらしく、平沢さんが苦笑しながら私の座るベンチまで小走りに戻って来た。
ベンチに腰を下ろしながら、平沢さんが静かに私に訊ねる。


「どう、梓ちゃん?
分かってもらえた……かな?」


訊かれるまでもなかった。
私は軽く頷いてから、隣に座る平沢さんの表情を窺ってみる。
平沢さんはやっぱり少し寂しそうに微笑んでいた。
寂しく感じるのも当然だと私は思った。


『公園に居るのは、あのベンチに座ってるツインテールの子くらいだろ?』


さっき律さんは平沢さんに視線を向けもせずに澪さんにそう言った。
耳に息を吹き掛けたのも澪さんじゃないかと疑っていた。
勿論、平沢さんを無視したわけじゃない。
深く知っているわけじゃないけど、あの人達はそんな事をする人達じゃないと思う。
例え心の底から誰かを嫌ったって、完全に無視なんてする人達じゃないはずだ。
大体、そんな事、やろうと思ったって出来るわけないじゃない。
つまり、平沢さんが見えていないんだ、あの人達には。
私は一息吐いて、平沢さんに向けて小さく応じた。


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