78:猫宮[saga]
2012/09/25(火) 18:52:01.87 ID:c2C+50ot0
「さあ、唯ちゃん……、見せてあげなさい!」
キャサリンさん(?)が宣言すると、唯さんが言われるままにギターを弾き始めた。
音階では知っていた『ふわふわ時間(タイム)』のギターパートだ。
憂ちゃんと違って、驚くほど上手いってわけじゃない。
でも、高一からギターを始めた事を考えれば、十分過ぎる腕前だった。
「おおっ! すげえ!」
「上達している!」
「自身に満ち溢れた表情!」
律さん、澪さん、紬さんの順番で称賛の声が上がる。
唯さんの前の実力は知らないけど、
部員のこの三人がそう言うのなら、唯さんの特訓は成功したんだろう。
でも、私が気になったのは、唯さんのギターの腕前よりその表情の方だった。
紬さんが言った通り、唯さんは自信に満ち溢れた表情でギターを弾いていた。
腕前より何より、伸び伸びと思いのままに弾いているみたいに見えた。
多分、今の私には出来ない表情で、今の私には抱えられない想いを抱いて。
あれが……、憂ちゃんのお姉さんの唯さん……。
と。
唯さんが軽くブレス。
そっか。唯さんはボーカリストでもあったんだ。
ギターをこんなに自信を持って弾けるんなら、きっとボーカルの方も伸び伸びと……。
そして、唯さんが口を大きく開いて歌い始めた。
「君を見てるといつもハートドキド……」
刹那、軽音楽部の三人がその場に倒れ込み、私も釣られて机に突っ伏してしまった。
歌が下手だったわけじゃない。
唯さんの歌声が物凄い濁声だったからだ。
唯さんの普段の声を聞いた事が無い私でも分かるくらい、その声は完全に嗄れ切っていた。
倒れ込んだ律さん達が、どうにか顔を上げて唯さんに視線を向ける。
「てへっ」と言って唯さんが自分の頭を掻くと、
それに倣ってキャサリンさん(?)も同じようなポーズを取って笑った。
「練習させ過ぎちゃった!」
「声嗄れちゃった!」
一大事のはずなのに、悪びれもせずに二人で楽しそうに舌を出す。
「カワイコぶっても駄目だあっ!」
律さんが非常にもっともな突っ込みをして、呆然とする。
私も律さんと完全に同意見だった。
こんな状態で唯さん達はどうしてまだ楽しそうに出来てるんだろう……。
「そんな……、じゃあ、ボーカルは?」
「変更するなら今日中よ」
「えっ? そうなのかっ?
だとすると……」
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