過去ログ - 光成「・・・パラサイトじゃと?」
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13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 10:08:57.28 ID:aHhPZELjo
だが、それらの事柄は、私達一般人には縁の無い話であり、テレビ番組の『世界の奇術』のそれを視て鼻で笑いながら、憐れみの眼差しを送るのが常である。
しかし、お約束に縛られているのは私達も例外では無かった。
「身体の大きい男は強い」「反社会的な見なりの者は危険」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 10:09:55.13 ID:aHhPZELjo
合気道場の門下生が、見えない力で投げ飛ばされるのと同じように、我々は強面の男に道の端に追いやられているのである。
新宿歌舞伎町。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 10:10:40.15 ID:aHhPZELjo
そしてその流動する人垣の中心には、何も、無い。
「どう言うことだ?こりゃあ・・・」
人々は無意識にこの路地裏を避けている。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 11:17:15.00 ID:oPI76kVIO
自分より少し背の高い後ろ姿に、待てと声を出そうと一歩踏み出すと、顔面が焼け焦げるかと思うような熱風に尻餅をついた。
「大丈夫かい?おっちゃん」
ティーシャツにジーンズの、あどけない表情の少年が、心配そうに手を差し伸べる。
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 11:18:20.17 ID:oPI76kVIO
「こりゃあ・・・どう言うことだ?」
眉間を通る油汗を拭うことすら許されぬ空気の中、川本が必死に絞り出したのは先ほどの自問だった。
少年は暫らく川本の瞳を見据え、やがてニコリと笑い話し始めた。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 11:18:58.19 ID:oPI76kVIO
「教壇の上から怒鳴るんだよね、これやったの誰だって・・・生徒達は目を伏せ身をすくめ、圧倒的な恐怖の前に事が過ぎるのを祈るように待つ」
少年は路地の奥へ振り返り、背中を見せ、続けた。
「幾度もその試練を乗り越え、やがて大人になる・・・本能的に学んだんだよね、知恵を身につけ体力を養って、恐怖を遠ざけることを・・・でも、もし大人となった今、世間の荒波から身につけた、この知力と体力の鎧をいとも簡単に吹き飛ばす程の「熱」を感じてしまったらどうするかな?」
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 11:19:56.15 ID:oPI76kVIO
通り過ぎる人々は変わらず、こちらを見向きもしない。
「意に介さない・・・いや、意に介せないと言ったほうが正確か、恐怖の度合いが強過ぎると、脳は現状を受け入れる機能をシャットダウンしてしまうんだ」
再度高まる鼓動は、川本の言葉を詰まらせる。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:49:34.75 ID:aHhPZELjo
この熱風を生み出しているのが、そこらをうろつく街のチンピラだと言うのか。
怪訝な目で少年を見るが、発言を撤回する様子は全く無い。
喧嘩などこの街では日常、アクビが出る程見て来た。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:50:11.30 ID:aHhPZELjo
少年はバッグでも小脇に抱えるように、川本の胴体に逞しい腕を巻き付けそのまま「熱」の中心、薄暗い路地裏へ突入した。
遠ざかって行くネオンに向かって「降ろせ」「離せ」と喚く川本の声は、少年の恐ろしく速く回転する両脚を止めることは出来なかった。
細長い道のポリバケツやビールケースが何度も頬をかすめる中、いい加減にしろ、となんとか手を伸ばし握りしめたシャツの背中を、渾身の力を込めて引くと、それはいとも簡単に裂かれた。
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:51:24.93 ID:aHhPZELjo
観念した川本は、バケツに掛けられた雑巾のように身を預けた。
みぞおちに感じる振動のリズムはやがて徐々にピッチが弱まって行き、やがてアスファルトに擦られるスニーカーの裏の音と共に停止した。
この路地の奥は、ビルの薄汚れた背中に囲まれた袋小路、まさに都会の死角である。
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:51:56.35 ID:aHhPZELjo
少年の腕がほどかれ、声のするほうに尻を向け、誰も居ない所にお辞儀をする形で着地した川本は、先程嵐のように吹き荒れるていた熱風が止んでいることに気付いた。
「終わっちゃたみたいだね」
あきれたような少年の声に振り返ると、スーツに金バッジ、オールバックの男と対面した。
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