過去ログ - 光成「・・・パラサイトじゃと?」
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21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:50:11.30 ID:aHhPZELjo
少年はバッグでも小脇に抱えるように、川本の胴体に逞しい腕を巻き付けそのまま「熱」の中心、薄暗い路地裏へ突入した。
遠ざかって行くネオンに向かって「降ろせ」「離せ」と喚く川本の声は、少年の恐ろしく速く回転する両脚を止めることは出来なかった。
細長い道のポリバケツやビールケースが何度も頬をかすめる中、いい加減にしろ、となんとか手を伸ばし握りしめたシャツの背中を、渾身の力を込めて引くと、それはいとも簡単に裂かれた。
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:51:24.93 ID:aHhPZELjo
観念した川本は、バケツに掛けられた雑巾のように身を預けた。
みぞおちに感じる振動のリズムはやがて徐々にピッチが弱まって行き、やがてアスファルトに擦られるスニーカーの裏の音と共に停止した。
この路地の奥は、ビルの薄汚れた背中に囲まれた袋小路、まさに都会の死角である。
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:51:56.35 ID:aHhPZELjo
少年の腕がほどかれ、声のするほうに尻を向け、誰も居ない所にお辞儀をする形で着地した川本は、先程嵐のように吹き荒れるていた熱風が止んでいることに気付いた。
「終わっちゃたみたいだね」
あきれたような少年の声に振り返ると、スーツに金バッジ、オールバックの男と対面した。
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:52:45.49 ID:aHhPZELjo
男の数は十人。
崩れたブロック塀に埋もれた男、重なり合い呻き声を上げる男達、地面に五体で大の字を描いている男。
様々なスタイルで敗者を表現していたが、皆統一して、屈強な大男だった。
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:54:27.32 ID:aHhPZELjo
デカい、サイズで言うならばそこに転がっている男達と差程変わらないだろう。
しかし、違う。
ダブルのスーツの上からでも解る、質の違う筋肉。
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:55:35.07 ID:aHhPZELjo
「忙しそうだね、親分」
少年の名は刃牙、先程と変わらぬ調子で話しかけると、その男は口角を少し持ち上げた。
それが合図のように、木崎と呼ばれる男は話し始めた。
27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:56:49.39 ID:aHhPZELjo
持って生まれた腕力だけで極道の世界をのし上がって来たと言う、受け入れ難いほどのシンプルなスタイル。
それゆえ、憧れる。
ただそこに立っているだけで跪き、地面に頭をこすりつけたくなる。
28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:57:27.62 ID:aHhPZELjo
「・・・わざわざどうした?」
「お使いだよ、徳川のじっちゃんの、花山は何処におるう!って」
両拳を挙げてヒステリックな老人の形相を模写した刃牙に、軽く俯いて息を漏らす花山。
29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:57:57.40 ID:aHhPZELjo
不似合いとわかりつつ進めてくる刃牙に、花山は肩をすくめて見せた。
「・・・お連れさんは?」
突然の木崎の一言に姿勢を正した川本は、適切な自己紹介をしようと脳内のありとあらゆる引き出しを引っ張り出し言葉に出そうとするが、大太鼓を連打するような心拍に混乱し、結果唇を開け閉めするだけに至った。
30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 14:58:22.41 ID:oPI76kVIO
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