過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.13
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或る分岐点 秋美Bルート
◆ebJORrWVuo
[sage saga]
2012/09/17(月) 17:27:31.39 ID:EPEdYzB9o
「少し手を擦りむいたみたいだけど、特に怪我はないみたい。でも、きょうちゃんを怪我させたのは自分だって思ってて、目に見えて落ち込んでるよ」
……馬鹿だな。俺は誰にも怪我させられてない。寧ろ、自分から怪我をしたんだ。
それよりも手を擦りむいた事は間違いなく俺に怪我させられた事なんだから、怒るべきなのに。
「……きょうちゃんが何を考えてるか分かるけど、わたしは今回の件、櫻井さんにも非があると思うよ」
「なんでだよ?」
「まずきょうちゃんの誘いを断らなかった事、危ない場所に居るって分かってたのに体勢を変えようとして足を滑らせた事」
「いやいやいや、待てよ。あれは俺が強引に誘ったわけだし、そもそも俺が誘わなければ危ない場所にいなかったんだから、全部、俺が悪いだろ」
「きょうちゃんが原因な事は分かってるよ。けどね、全てがきょうちゃんが悪いとはわたしは思わないかな」
「…………」
麻奈実は、俺に甘い。だから、庇ってるのかと思ったが、しっかりと俺が原因だという事は認識してる。
基本、公平な奴でもあるからな。
悪いことは悪いし、間違えてることは間違えてると言ってくれる貴重な幼馴染。
「全てが悪いとは思わない、というだけであって、今回、きょうちゃんは悪いことは一杯してるんだからね。ちゃんと反省すること」
「……悪かった」
「あとでちゃんと櫻井さんにも謝るんだよ?」
「おう」
そうだな……。自分でも言ったが、あれは少し調子に乗りすぎていた。
あれで櫻井が落ちて怪我でもした日には、林間教室が中止になっていた可能性もある。
そもそも怪我どころでは済まない事態になっていた可能性もあった。
……反省しよう。
森の小道に入り、既に夕暮れになろうという木漏れ日を浴びながら、麻奈実と二人で歩く。
「……そうだ、麻奈実」
「……なに」
「…………」
俺は足を止めて、麻奈実へと向き直る。
さっきから怖い顔をしている麻奈実は、少し驚いたように立ち止まる。
「ごめん!」
そんな麻奈実に対して俺は頭を下げた。
深く深く頭を下げた。
「……いいよ」
「約束したのに、危険な事して、ごめん!」
「うん」
「おまえが、危ないって指摘したのに、止めなくてごめん!」
「……うん」
そんな俺の謝罪を真っ直ぐに麻奈実は受け入れ、そしてようやく表情を和らげてくれた。
「すべて、許すよ」
「……ごめんな」
簡単にこの幼馴染は許すと言ってくれているが、それがそんな簡単じゃないことを俺は知ってる。
例えば麻奈実が、俺と同じように無茶をして怪我をした場合、きっと俺はそう簡単に許せないと思う。
心配ってのは簡単に割り切れるものじゃないからだ。
だからこうやって許してくれる麻奈実を俺は密かに尊敬していたりする。
ホント、俺なんかより全然スゲー奴なんじゃねーかな、こいつは。
「あ、きょうちゃん」
「ん?」
「……前」
麻奈実に促されて、その視線の先に目を向ける。
そこには一人の少女が立っていた。
先ほど、俺が怪我をさせてしまった少女。
櫻井秋美。
「……謝る、んだよね?」
「ああ」
「じゃあ、わたしは先に戻ってるから、いってらっしゃい」
謝る場面なら二人きりがいいだろうとした配慮だろう。
麻奈実は、そう言いのければあっさりと俺に背を向けて来た道を戻っていく。
……監視の目はいいんだろうか、と思ったが、しかしそれは自明の理だ。
櫻井の片手に巻かれた包帯を見れば、俺が何か無茶なことを出来るわけがない。
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