過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.13
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766:或る分岐点 秋美Bルート  ◆ebJORrWVuo[sage saga]
2012/09/17(月) 17:27:58.12 ID:EPEdYzB9o
 俺は軽く駆け足気味に櫻井へと近づく。
 櫻井はそんな俺を見て、声を発する。
 
「……こーさか」
「櫻井……」

 二人の距離が、岩場の上での距離と同じぐらいになったタイミングで、
 
「ごめん!」
「ごめんね!」

 二人とも頭を下げた。
 
「待て待て、本当に謝るべきは俺だって。俺が原因なんだからさ」
「いやいや、あたしだって悪いよ……あの時、ちょっと危ない場所に立ってるってコト、忘れちゃってたし」
「忘れちゃってたって……なんでだ?」
「うぇ?」
「そう言えば、何か言いかけてたよな、あの時」
「げげっ! やば、こいつ覚えてやがる……っ!」

 というか今の会話で思い出した。
 確かに、櫻井が落ちる前、彼女が何かを言おうとして、少しこちらに一歩を踏み出した。
 その時に、足元が崩れて、という流れだった。
 忘れたくても忘れられないぐらい、脳裏に焼き付いている場面だ。
 
「あれ、何を言おうとしてたんだ?」
「え、ええ、ええと……わ、忘れちゃった、かもっ!」
「『だからぁ! あたしは、』だったか」
「う……た、タンマッ! 思い出すなっ!」
「いや、忘れちゃったって言うから、少しでも思い出せるようにな……?」
「ばぁか! 忘れてるわけないでしょっ!」

 いや、忘れちゃったかも、とか言ってたじゃねえか……。
 腑に落ちないが、しかしそこに突っ込んでも会話が終わらなくなりそうなので、無理やり納得する事にする。
 
「じゃあ……なんだよ?」
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」

 何故か顔を真赤にして唸り声をあげる櫻井。
 まさか野生動物の真似だろうか。俺も何か吠えたりした方がいいんだろうか。
 いや待てよ、こういう態度、そういえばうちの妹もよくやるな。
 その後、「知んない、バカっ!」とか続くんだが……。
 
「……景色、思い出して」
「ん、何の?」
「キミって本当に察しが悪いよね……」
「あ、ああ、山頂のな?」
「そう、景色、思い浮かべて、今直ぐっ!」
「お、おう」

 凄い剣幕で言う櫻井に気圧される形で、俺は頷き景色を思い出そうと目を閉じる。
 そして景色を思い返す。
 山頂、そう、そこに広がるのは絶景。どこまでもどこまでも、遠くに広がる世界――。
 
「超いー景色! 感動した! 最っっ高の気分だよ! ぜんぶ、ぜんぶキミのおかげっ!」

 その景色を一緒に眺めている櫻井が、俺の隣でそう叫ぶ。
 最も俺が欲しがっていた言葉、勝手な努力が、自己満足のお節介が、認められる言葉。
 
「櫻井秋美は! 高坂京介のことが! だいっ好きだぁああああああああああぁっ!」

 そして、そこから繋がった言葉は……愛の告白としか思えない、叫びだった。
 
「……え?」
「……っ……はぁ……はぁ……はぁ」

 全てを言い切ったのか、櫻井が息を切らせて、何故か涙を溜めた目で俺を見ている。
 対して俺は、阿呆のように口を開いた侭、身動ぎ一つ出来ずに居た。
 
 人生、初の告白。
 身体の奥が痺れるような、足が浮き上がるような、そういう感覚。
 
「い、今のは……」
「ひひ、びっくりした?」
「すげえびっくりした」
「へへ……これがあたしの言おうとしてた言葉」
「…………」
「少しだけ、鮮度が落ちちゃったけど、でも気持ちは全然変わってないから」


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