20:μ[saga]
2012/07/24(火) 19:01:32.92 ID:A0mC0IWi0
私は肩を竦めて、唯の行動を気にするのをやめた。
この家から外出さえしなければ、唯が他に何をしてくれていても私に不満は無い。
幸い、読まずに積んである小説は二十冊以上ある。
トルストイの『戦争と平和』も全巻ある事だし、時間だけは無駄にせずにいられそうだ。
夏休みの宿題の読書感想文は、この『戦争と平和』についてでいいだろうしね。
数時間経って。
時計が十二時を指し示した頃。
扇風機に向けて喋っていた唯が目に見えて弱り始めた。
一番暑い時間帯に差し掛かり始めて、
室内に極悪と言っても差し支えないほどの熱気が籠っていたからだ。
もっとも、私も唯の事を言えた義理じゃない。
登場人物が五百人を超えると言う『戦争と平和』を読んでいるせいか、
脳内が多くの情報で綯い交ぜになった上に熱気で思考力も低下して……、
簡単に言うと、何をするのも面倒臭くなってきた。
部屋着は私の汗を吸って肌に纏わりつくし、
密着した部屋着に熱がこもって更に気鬱が私を支配しようとする。
唯も扇風機に喋り続けるのが嫌になったのか、
単に飽きたのか、身体中を汗まみれにして畳の上で寝転んでいた。
「あぢゅいー……」なんて言わなくても分かり切っている当然の事を口にして。
暑いのは私も同じだった。
この熱気をどうにかするのは不可能としても、
せめて私の肌に纏わりつく部屋着だけはどうにか出来ないのだろうか……。
新しい服を着てさっぱりするにしても、数には限りがあるわけだしね……。
だとしたら、私がこれから取るべき道は……。
うん、と私は一人で小さく頷く。
私は一つの答えに辿り着いたのだ。
たったひとつの冴えたやり方と称しても問題無いほどの解決策。
誰も損しない圧倒的に冴えた解決策にだ。
そもそも私は夏はいつもそうして過ごしているのだ。
だから、私は畳の上で寝転がる唯に伝えたのだ。
私の辿り着いたたったひとつの冴えたやり方を。
「服を脱ぎなさい、唯。
この熱気に対抗する唯一の手段……、それは全裸になる事よ」と。
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