21:μ[saga]
2012/07/24(火) 19:02:08.28 ID:A0mC0IWi0
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唯が私から目を逸らして頬を紅く染めている。
恥じらいと言う物を知らない子に見えて、唯は意外な所で恥じらいを持っているのよね……。
中学時代のあの事件を少しだけ思い出す。
あの修学旅行の日も、唯は想像以上に恥ずかしがってしまっていた。
この子、ひょっとして今も……?
一瞬だけそう考えはしたけれど、私はまずはそれを気にせずに自らの部屋着を脱ぎ始める。
「ちょっ……、和ちゃん、本気で……っ?」
唯が動揺した声を上げて視線を私の方に戻す。
自分が脱ぐのは嫌でも、人の脱ぐ姿は気になるらしい。
唯ったら、やっぱり脱ぐ事に関して複雑な感情を持っているみたいね……。
そう考えながらも、私は肌に纏わり付いていた部屋着を一枚ずつ脱いでいく。
ショーツ一枚になった所で、私は唯を決心させるために声色を優しくして呟いてあげた。
「本気よ、唯。
そもそも私が冗談なんてあんまり言わない性格って事は分かってるでしょう?
それに私は自分が変な事をしているとは思っていないわ。
この部屋は蒸し暑い。蒸し暑いから脱ぐ。
人間として至れる完璧な帰結だと思うけれど?」
「それは……、そうかもだけど……」
「あんたも知ってるでしょう、唯?
私は家ではいつも薄着だって事を。
実はね、薄着と言うより、私、自宅で寝る時はいつも全裸なのよ。
勿論、あんたの家でのお泊まり会とかでは流石に服を着ていたけれどね。
私、人間が眠る時は全裸が正装だと思っている人間なの」
「やっぱり、そうなんだ……。
和ちゃんが私の家に泊まりに来た時、妙に寝相が悪いのが気になってたんだよね……。
あれは単に寝相が悪いんじゃなくて、
パジャマを着なれてないから寝苦しかったって事だったんだね……」
「そういう事だったのよ。
あんた、意外と鋭いじゃない。
とにかく、そういう事なのよ。
暑い時に服を着るなんて事、私には理解出来ないわ。
他人の目がある時ならともかく、周囲に居るのが身内だけなら、
真夏日は裸こそが人間として取るべき正装だとも思ってるくらいよ」
「それは流石に変だよ、和ちゃん……」
「どうしてかしら?
そもそも人間が服を着るのはどうしてか分かってるの、唯?
聖書の時代、人間は常に全裸で過ごしていたわ。
全裸をやめたのは知恵の実を得る事で恥じらいを知り、
裸と言う生物の本質から遠ざかってしまったからなのよ。
つまりね、生物の本質とは裸なの。
人間の文化的な行動を否定するつもりはないけれど、
だからと言って裸という生命の本質を否定するのも愚かな事よ。
特に今の私達は暑さと言う強大な外敵に立ち向かわなければならない状況に追い込まれているわ。
輝かしい未来を掴むためなのだから、恥じらいなんて今は必要無いのよ」
「で、でもでもー……」
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