過去ログ - PoH「イッツ・ショウ・タイムと行こうぜ!」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県)
2012/07/24(火) 10:05:51.14 ID:pR10wcino
無限の蒼穹に浮かぶ巨大な石と鉄の城。
これがこの世界の全てだった。

職人クラスの酔狂な一団がひと月がかりで測量したところ、
基部フロアの直径はおよそ十キロメートル、世田谷区がすっぽり入ってしますほどもあったという。
その上に無慮百に及ぶ階層が積み重なっているというのだから、茫漠とした広大さは想像を絶する。
総データ量などとても推し量ることができない。

内部にはいくつかの都市と多くの小規模な街や村、森と草原、湖までが存在する。
上下のフロアを繋ぐ階段は各層にひとつのみ、その全てが怪物のうつろく危険な迷宮区画に存在するため発見も踏破も困難だが、
一度誰かが突破して上層の都市に辿り着けばそこと下層の各都市の《転移門》が連結されるため誰もが自由に移動できるようになる。

そのようにしてこの巨城は二年の長きにわたってゆっくりと攻略されてきた。
現在の最前線は第七十四層。

城の名は《アインクラッド》。約一万もの人間を呑み込んで浮かび続ける剣と戦闘の世界。またの名を――

《ソードアート・オンライン》

SSWiki : ss.vip2ch.com



2:1[saga]
2012/07/24(火) 10:09:25.02 ID:pR10wcino
アインクラッド標準時 二〇二四年 七月  現在の最前線・第六十三層


昼間だというのに暗く茂った森のフィールドにて、切羽詰まった表情の男が三人、互いの背を補うように佇んでいた。

以下略



3:1[saga]
2012/07/24(火) 10:14:19.35 ID:pR10wcino
ライトエフェクトが限界まで抑えられたその鉄針は恐ろしい速さで男達の内一人に迫り、気付く間もなく一瞬で、男の喉に深々と刺さった。

SAO内部、その全てを統括するシステムプログラム《カーディナル》の統治下では、
例え腕を切り落とされようと足を潰されようと、表現として赤い光芒が飛び散り、プレイヤーに不快な感触のノイズが走るが、実際のリアルな血液は出ない。

以下略



4:1[saga]
2012/07/24(火) 10:17:02.62 ID:pR10wcino
全て致命傷に至る箇所を見事に捉えており、こと心臓付近に至っては、無慈悲なことに数十本の針が密集していた。

これによってクリティカルポイントを数回に亘って攻撃された男のHPバーはあっという間に減少し、
止めとして発射された最後の鉄針がこれまでよりも強く腹に撃ち込まれたことによって、遂に尽きた。

以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/07/24(火) 10:18:03.52 ID:y+RAX7lqo
SAOか


6:1[saga]
2012/07/24(火) 10:21:03.49 ID:pR10wcino
俺がそいつの噂を聞いたのは、
仮想空間のくせに本州の茹だるような暑さを見事に再現していた七月《クチナシの月》のことだった。

その日、俺はいつも通りに一日分の攻略ノルマを済ませ、
さて帰ってアイテム売ったら寝るかと拠点にしている第五十層《アルゲート》までテレポートし、常連となっている怪しげな佇まいの武器屋に入り、
以下略



7:1[saga]
2012/07/24(火) 10:24:51.09 ID:pR10wcino
既に疲労困憊している俺・キリトは、うんざりとした表情を作ってエギルに振り返った。

この黒肌で禿頭の巨漢は対してなかなか似合わない真剣な顔つきで、

エギル「ああ、最近噂になってることなんだけどよ……知ってるか? 《ピッカー》の話」
以下略



8:1[saga]
2012/07/24(火) 10:28:13.96 ID:pR10wcino
エギル「知ってるかどうかを聞いてるんだよ」

キリト「いや、知らんな」

エギル「ああ、だろうとは思った。攻略以外に脳を使わんお前のことだからな」
以下略



9:1[saga]
2012/07/24(火) 10:31:05.60 ID:pR10wcino
俺は今もアイテムストレージに格納されている細長い銀の針を思い出していた。

ダメージはそれほど望めないが、ほぼ確実に先制攻撃(ファーストアタック)を打てるのと、
スキルを上げればほぼ確実にヒットさせることが出来るので、あって損は無しと愛用させてもらっている。

以下略



10:1[saga]
2012/07/24(火) 10:35:16.32 ID:pR10wcino
《PK》……プレイヤーキルを趣向とするイカレたプレイヤーのことを、SAO内では《オレンジプレイヤー》と呼ぶ。

フィールド内で略奪、殺害など、ゲームプレイに支障を来すと判断されたプレイヤーのカーソルの色がオレンジに変わることから、そう呼ばれている。
ちなみに正常な者のカーソルは緑だ。

以下略



11:1[saga]
2012/07/24(火) 10:38:05.51 ID:pR10wcino
このゲーム内において、HPバーがゼロに至った瞬間、そのプレイヤーのアバターはポリゴンの破片となり、消える。
ここまでは従来のゲームも同じだ。

が、このSAOは違う。

以下略



12:1[saga]
2012/07/24(火) 10:42:21.33 ID:pR10wcino
そもそもナーヴギアは流線型のヘッドギアと言う構造で、馬鹿でかいヘルメットのような代物の内部には無数の信号素子が存在する。
それらが発生させる多重電界によってナーヴギアはプレイヤーの生体脳そのものと直接接続される。
それによって、プレイヤーは情報として送られてくる五感――味覚、嗅覚、視覚、触角、聴覚を感じることが出来るのだ。

開発され、一般に普及された二〇二二年五月、ナーヴギアの作り出す世界のことを人はこう呼んだ――『仮想現実』と。
以下略



13:1[saga]
2012/07/24(火) 10:45:34.08 ID:pR10wcino
発売当初、ベータテストと称した先行プレイ期間と言うものが設けられ、
俺は僅か千人の募集人員の狭き門を掻い潜ることが出来た。

おかげで約二ヵ月間をゲームの仕様など諸々について学ぶことが出来たし、先行販売の特権も手に入った。
僥倖という他にあるまい。
以下略



14:1[saga]
2012/07/24(火) 10:49:16.04 ID:pR10wcino
――――が、聞けば、どうもそいつは犯罪者(オレンジ)のみを殺して回っているいわゆる《刺客》または《仕事人》らしい。

投擲スキルをマスターし、使う武装はほとんど消耗品のピックのみで跡が残らず、
おまけに目撃証言はあれども確かな情報は未だに無い。

以下略



15:1[saga]
2012/07/24(火) 10:53:36.02 ID:pR10wcino
キリト「……いい奴なんじゃないのか? 殺してるとは言え相手はオレンジなんだろう」

キリト「やったことの大小があるとは言え……、何か妙か?」

エギル「妙だろ。確かにPKが減るのはありがてぇけどよ、何でそんなことするんだ?」
以下略



16:1[saga]
2012/07/24(火) 10:56:49.46 ID:pR10wcino
俺はその店主に挨拶し、店を出た。
同時に、俺はその《ピッカー》とやらに思いを馳せる。

オレンジのみを殺し続けるプレイヤー。
使う武器はピック、それのみ。
以下略



17:1[saga]
2012/07/24(火) 11:00:24.83 ID:pR10wcino
試しにに近くの顔見知りの情報屋に寄り、高い金(コル)を払って聞いてみたが、エギルの言った通りの情報しか手に入らなかった。
金返せこの野郎。
それともあいつの情報収集能力も馬鹿にはできないと言うことだろうか。
何か釈然としない。
やり手のセールスマンだってのは分かるんだが。
以下略



18:1[saga]
2012/07/24(火) 11:03:03.74 ID:pR10wcino
さすがは刺客。

できるだけ顔を伏せて歩いているようで、
降り立っている層の大体は古びた洋館や湿っぽい地下迷宮など、攻略以来あまり人が寄り付かない雰囲気の場所だった。

以下略



19:1[saga]
2012/07/24(火) 11:06:04.10 ID:pR10wcino
俺とて一介のゲームプレイヤー、それもネトゲ中毒者だ。
どんな世界にも上はあるもので、それはこのSAOでも同じである。
血盟騎士団団長様、《神聖剣》ことヒースクリフにはあまり勝てる自信が無い。
他にも俺なんかよりよっぽど強い奴は五万といるだろう。
いやアインクラッドの収容人数の上限が一万程度だったからそれは間違いか。
以下略



20:1[saga]
2012/07/24(火) 11:08:20.40 ID:pR10wcino
が、かと言ってすぐにどうこう出来るはずも無く、
仕方なく俺は通常の攻略に加えて、主街区の影の部分や古びた洋館系フィールドなど、オレンジプレイヤーが徘徊していそうな場所を周ることにした。

《ピッカー》はオレンジのみを狙っているので、こうすれば少しは会える確率が上がるだろう。

以下略



21:1[saga]
2012/07/24(火) 11:13:36.61 ID:pR10wcino
ある日、夜に間近い時間。
俺が普通に迷宮区の攻略を終え、ボスがいるであろう玉座前のマップを確認し、さてこれを公開して近々攻略パーティでも起こすか、と意気込むと、

「――――うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

以下略



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