過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:28:06.87 ID:4DOG5YTr0

私はこれといった特徴のない、ごく普通の女子中学生だ。
通知表は、4や2も含めて平均するといつもオール3。
運動神経だって得意でもなければ、苦手でもない。
身長もうちのクラスの女子ではど真ん中、
唯一、胸だけは下から数えるくらい慎ましいけど、
そんなことを言ったら、由美や悠ちゃんに怒られそうだ。

そんな平凡を絵に描いたような私だけど、和江ちゃんに言わせると、

「松子ちゃんは、すぐ友達ができて羨ましい」

らしい。自分では自覚はあまりないけど、
私は交友関係がやたら広く、他の人に比べて友達が多いというのだ。
言われてみれば、そうなのかもしれない。

珊ちゃんと和江ちゃんは、家もご近所さんで幼稚園の頃からの幼馴染。
恵ちゃんと幸子ちゃんは、中1の頃からずっと同じクラスの仲良し三人組だ。

今年に入ってからは、由美と悠ちゃんがその仲間入りをした。
由美は私のすぐ前の席で、休み時間に時々話したり、
美術の授業で一緒に絵を描くなどして、すっかり意気投合した。
由美だけ「〜ちゃん」付けではなく呼び捨てなのは、
「由美ちゃん」と呼ばれるのを本人が嫌がったため、敢えてそうしている。

悠ちゃんは出席番号が隣同士で、
体育の授業で一緒になったことを機に仲良くなった。
悠ちゃんは水泳だけでなく、あらゆる運動が得意なスポーツ万能少女で、
体育の時の生き生きした彼女を見ると、いつも輝いて見える。
友達の友達ということでは、綾野さんや藤巻さんともそれなりに親しくなった。
そのため、先月末に綾野さんが亡くなった時は、私もショックだった。

昔「友達100人できるかな?」なんて歌があったけど、
実際に毎年の終わりに年賀状を書くと、その多さに我ながら感心してしまう。
クラスが離れ離れになっても、ほとんどが電話とか手紙で色々やり取りするため、
疎遠になってしまう事例は、ほとんど見られない。
また、年賀状を書くのが面倒くさいと思ったことだって、一度もなかった。
巡り会ったクラスメイトは、私にとってかけがえのない宝物だ。

そして今日も、同じ部屋になった柿沼さん改め小百合ちゃんとも、
すっかり打ち解けた。
小百合ちゃんは一件内気で人見知りしそうな印象を受けるけど、
本のことになると饒舌になり、その知識量に圧倒されそうになる。
私は色んな本を広く浅く読むタイプなので、話題にもついていける。
どうも、この合宿は気が沈みやすくなってしまうため、
好きなことを色々話し合えば気が紛れる。
お互いに、そう思ったのかもしれない。

と、隣から謎の悲鳴声が聞こえた。その直後には『ドスン!』と大きな音もする。

「ど、どうしよう!小百合ちゃん・・・」

「松子ちゃん、落ち着いて。本とかだと、
うかつに外へ出ると危ないから、中で待ってましょ。
こんな時のために、鍵もかけておいたし・・・」

しばらくすると、物音も消え、辺りはもとの静寂を取り戻したかに見えた。
しかしほっとしたのもつかの間。

「殺せえええええええええ!!!」

スピーカーから、鼓膜が破れそうになるくらい大きな、杉浦さんの叫び声が響き渡った。
すっかり気が動転した私たちは、堪えきれずに部屋から飛び出してしまった。



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