過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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124:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:42:22.58 ID:4DOG5YTr0
翌朝、起きて早々に朝食のバイキングを終え、
二日目のメインである上野動物園に出発する準備を始めようとしている最中、
たまたまつけた朝のテレビニュースを見て、私は凍り付いた。
「あら、これって和江の通ってる中学校のことじゃない?」
お母さんの言葉すら、耳に入っていなかった。
火事で無惨に崩れた建物。
画面には、担任代理の千曳先生がテレビのインタビューを受けていた。
「私が駆けつけた時には、既にあちこちで火の手が上がっていまして、
これは尋常ではないねと、すぐに感じました・・・」
どことなく、いつも以上に千曳先生がやつれて見えた。
もちろん、県内のローカルニュースなんかではない。
全国区のニュースで報道されているのだから、相当な大惨事になったのだろう。
そして、テロップには10人以上の死傷者という、信じられない情報が飛び込んだ。
合宿には、珊ちゃんと松(しょう)ちゃんが参加しているはず。
もしあの二人、いやそれだけじゃない。みんなの身に何かあったら・・・!
「お父さん、お母さん。やっぱり帰る!私のクラスのみんなが大変なの!」
「帰るって、あんた・・・。ありゃ、えらい騒ぎじゃない!」
「珊ちゃんと松ちゃんが・・・ど、どうしよう・・・」
「落ち着くんだ。仕方ない、上野動物園はまた今度だ。帰るぞ!」
「えー!いやだー!パンダ見たいのにー!」
ぐずる弟を説得するのに三十分かかり、
慌ただしくリゾートホテルを出たのは午前9時頃のこと。
行きと同様に、交通機関を乗り継ぎ、
夜見山に戻ったのは、夕方になる少し前のことだった。
その足で私は夕見ヶ丘の病院へ向かい、職員さんに二人の安否を尋ねる。
半ばパニックになってしまった私に戸惑いながらも、
その職員さんに珊ちゃんが入院している病室を教えてもらうと、
私は逸る気持ちを抑えてその部屋へ向かった。
扉を引く。いた!
珊ちゃんはベッドで横になっている。
それを取り囲むように、松ちゃんと江藤さんが座って話していた。
「良かったぁ・・・珊ちゃーん!!!」
私は脇目もふらず、珊ちゃんのベッドへ駆け寄る。
瞳はとうに濡れていた。
「バカ!そんな大声だすんじゃないの!他の患者さんがびっくりするでしょ」
「珊ちゃんの方が大声だよ・・・」
珊ちゃんたちの無事をこの目で確かめると、
それまで溜まったものが一挙に決壊して、涙が止まらなかった。
それくらい、彼女たちは大切な友達なのだから・・・
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