過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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136:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:53:35.25 ID:4DOG5YTr0

「・・・これが災厄を止める方法だ。
これをどう解釈するかは、君達しだいだ。ただ、よく考えて行動してほしい。
ちゃんと考えて・・・周りの友達と相談して、後悔しないように・・・」

録音を終えた俺と望月は、数日後、適当な理由を付けて校内に入り、
3年3組の教室にある掃除用具入れの天板の内側・・・
松永さんと同じ位置に、MDを入れてテープで何重にも巻いた箱を、
またテープで厳重に貼り、掃除用具入れのドアを閉めた。

これは大きな賭けだ。
何度も、このMDが役に立つ以前に、
俺たち以上の新たな災いを呼ぶのではないか?という懸念が何度も頭に浮かんだ。
それでも、何もしないまま災厄が一年間続くようでは、
みんなの精神状態が大変なことになってしまう。
これは万策尽きた時の最後の手段だ。
そう言い聞かせて、俺と望月は録音に臨んだ。

テープの内容は、まず松永さんの話。つまり『死者』を死に還した成功例だ。
その後に、俺の犯した過ち。
すなわち、『死者』じゃない人間を手に掛けてしまった俺の罪。
そして『死者』を死に還す部分だけを流して、
クラスメイトの同士討ちが起きたという事の重大さ、
その危険さを、耳にたこができそうなくらい、俺は繰り返し説明した。
できればこのMDを手にした生徒は、クラス全員でこの内容を一部だけでない、
全部聞いて話し合って欲しい。
そうすれば、俺たちのような悲劇は防げるのではないだろうか?

「勅使河原君、あの今のMDでさ『後悔しないように』って、
勅使河原君はやっぱり後悔してるの?」

望月が口を開いた。俺はうつむく。

「そりゃ・・・元を正せば、だいたい俺のせいだし」

「あのね、ボクも後悔してる」

「ヘ?なんて、おまえが?」

「ボクもあの時、杉浦さんたちにテープのことを一人で勝手に話したから、
あんなことになったんだと思ってるし・・・それにね、千曳先生が言ってた。
『お互い助け合って、一緒に頑張って』って。
ボクね、この災厄ってこの後悔も含めてだと思うの。
だから、今年の災厄を一緒に乗り越えていこう。勅使河原君」

「お、おう・・・」

そうだな。生き残ってしまった俺たちに残された役目。
風見をはじめ、死んでしまった仲間の分まで、
俺たちが頑張って生きていかなきゃいけないよな・・・。
あいつだって、いつまでもウジウジしている俺なんて見たくもないだろうし、
そんな俺に対して、どこかで憎まれを口叩いてるかもしれない。

「ありがとな、望月。俺たちは生きてるんだもんな」

一時はどん底にまで落ちた俺の心に、光を差したのは、
サカキや望月といった3組の仲間だった。
もう二度と、そんな大切な仲間を疑ったりしない。
今度こそお互いに信じ合って、残りの学校生活を悔いのないものにしたい。
改めて、俺はそう思った。



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