過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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137:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:54:04.19 ID:4DOG5YTr0

◆No.16  Megumi Tatara

「皆さんの中には、既にニュースなどで知ってる人もいるかもしれませんが、
先日起こった火災事故で、クラリネットパートの王子君が・・・」

部活が始まる前、秋山先生の大事な話を聞いた部員のみんなから、
一瞬どよめきが起こったかと思うと、静まりかえり、
間もなく、あちこちですすり泣く声が辺り一面に広がった。

「先生・・・」

「多々良さん、私も辛いの。
私の姉さんも3年3組に在学中に事故で亡くなったし、
おととしも、3年3組の担任だった三神先生があんなことに・・・
どうして・・・この学校は、いつまでこんなことが続くのかしら・・・」

私の隣で立つ秋山先生の瞳にも、一筋の涙が流れていた。
秋山先生も、美術の授業で教わったことのある三神先生も、夜見北のOGである。
3組に起きた悲劇を知るものにとって、これほど長きにわたって、
辛い思いしてきた秋山先生の悲しみは計り知れない。

王子君は容姿端麗で、性格も温厚。
女子部員、特に下級生にとっては、まさに白馬の王子様のような憧れの的だった。
その王子君の死を誰もが悲しんだ。見渡すと、中には声を上げて泣く子もいた。

誰もが、悲しみが癒えぬまま部活を終えると、
猿田君が後片付けをするのが、目に入った。
肩を落とした猿田君の後ろ姿が、今日はどこかしら小さく見える。

「ああ、多々良さん・・・」

「大丈夫、猿田君?」

自分で何を言ってるのだと後悔した。大丈夫なわけがない。
三年間、同じクラリネットのパートを務め、
部活でもクラスでも、いつも王子君と仲の良かった猿田君は、
当たり前のように、合宿でも一緒だった。
火事で王子君が亡くなったことが、彼の心に大きな傷を与えたのは言うまでもない。

「いつまでもアシが悲しんだって、王子も喜ばんぞな。
それよりもアシをわざわざ気遣ってくれて、多々良さん、だんだん・・・」

猿田君は笑顔で答えたが、やはり寂しさを拭い切れていない。
無理して明るく振る舞う猿田君が不憫でならず、
私の方が辛くなってしまった。



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