過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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150:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 23:00:44.04 ID:4DOG5YTr0

演奏会の終了後、ホールを出たぼくたち四人が帰り道を歩む中、
勅使河原が口を開いた。

「そうだ、サカキ。まだ数日は夜見山にいるよな?
東京に戻る前に、サカキんちでお別れ会をしないか?
お菓子とかは、ちゃんと俺が持ってくるからさ!」

「ああ、いいよ。あさって、おばあちゃんがおじいちゃんを連れて
家を留守にするから。見崎と望月はどう?」

「私は大丈夫・・・」

「ボクもいいよ。こうしてみんなが揃うのもあと少しだからね」

「にしても、サカキがこっちに来てから一年か・・・あっという間だよなぁ。
俺たちいつも話しているから、逆にサカキと会ってからまだ一年しか経ってない、
という感じもしないけどさ」

それは、ぼくも同じことを思っていた。
辛く悲しい出来事も沢山あったけど、
中学最後の一年間を過ごした夜見山での暮らしは、
何でもあるけど、人との繋がりが希薄だった東京での生活とは
比べものにならないほどずっと濃いものだった。
この一年はある意味、それまでの東京で過ごした14年間より、
遙かに凝縮されたものだったと思う。

「でも榊原君がいなくなると、また淋しくなるよね。
ボクと見崎さんは同じ高校に進学するけど、
勅使河原君は別の高校に行っちゃうし・・・」

「まぁ、俺もまさか高校に行けるとは思わなかったけどな。
何とかなるもんだよなぁ、案外」

勅使河原と望月が話している間に、鳴がぼくに話しかけた。

「榊原君、新しい高校の暮らしが落ち着いたら、
東京に遊びに行くから、いつか・・・」

「いつか、ね・・・ありがとう、見崎・・・」

鳴と約束した美術館巡り。それが実現するのはいつだろうか?
今年中かどうか、それもわからない。
でも、ぼくは必ず東京で見崎とまた会えることを確信していた。

その名前の通り、夕見ヶ丘から見た夕暮れの夜見山の景色は、
どこまでも美しかった。
一年前、夜見山に来て早々入院した時と変わらぬ景色のはずなのに、
今では全く違う印象を受ける。

間もなく終わりを告げる、夜見山で過ごした一年間、
そして3年3組で出会ったクラスの仲間たち・・・
この景色と共に、目に焼き付けて一生忘れずにいたい。
ふと見上げた、間もなく日の沈む夜見山の町並みを見て、
ぼくは、そう思った。











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