過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:44:45.72 ID:4DOG5YTr0

その翌日は、まだ学校に行くことへの恐怖が頭の中から離れず、
ようやく登校できるようになったのは、四日後の17日になってからのことだ。

「望月君。この間は本当にありがとう。
・・・ごめんなさい、こんなに遅くなっちゃって」

「ううん。それより、江藤さんが元気に学校に来られるようになって良かったよ」

「望月君・・・」

ホームルーム前に望月君にお礼を言った時、少し彼にときめいてしまった。
望月君は華奢かつ童顔で、まだ変声期前の子供っぽい声をしており、
本当に男の子かと疑いたくなるくらい、中性的な容姿をしている。
女子の席にいるし、わたしとほとんど背が変わらない上に、
ショートヘアのわたしより髪が長いため、余計そう思えてしまう。
現にわたしと並ぶと、どっちが女の子でどっちが男の子なのか、
時々自分ですら、わからなくなってしまう。
でも、こうしてみると望月君も頼もしくて
やっぱり男の子なんだな・・・ふと、そう感じるようになった。

ホームルームで、突如三神先生が言い出した夏休みの合宿に戸惑いつつも、
放課後、今日最大の目的を果たすために、わたしはプールに向かった。
入り口の扉を開けると、プールサイドにいた仲間や後輩達が、
一斉にわたしの元へ駆け寄ってきた。

「江藤、あんた大丈夫なの?」

「先輩、躰のお具合悪かったんですか?」

みんなが心配してくれたのは嬉しかった。が、どこか気を遣いすぎて、
腫れ物に触るように、恐る恐る接しているような感触も見受けられた。

それはともかく、競泳水着に着替えたわたしは、準備運動を済ませると
約一週間ぶりのプールへ、思い切り飛び込んだ。

『パシャーン!!!!!』

水を切る心地よい響きを聞く暇もなく、わたしはバタフライを泳ぎ始めた。
ああ、やっぱり水の中は気持ちいい。
四日前の事件以来、躰にまとわりついていた不安や煩悩が、
水の中で綺麗に流れ去っていく。
無我夢中で泳ぐ中、わたしは泳ぐことの歓びを躰全体で感じていた。



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