過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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66:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:56:02.13 ID:4DOG5YTr0
「オッス。どうしんだよ、こんな夜遅くに」
「ああ、奈緒ちゃん。明日、東京に行くんだっけ?」
「そだよ。んで、わざわざそんなこと聞くために、電話したのかよ?」
「実は僕も、明日合宿に行くことになったから、それを伝えようと思って」
「はあっ!?あんたバカじゃねぇの?
てか、あんた自分の躰のことわかってんのかよ?」
マジかよ、大輔。
いかにも危なそうな合宿に自分から行くと言い出すなんて、
これはなんだ?天変地異の前触れか?
思わず声を荒げてしまい、
遠くから「うるさいわよ」とどなる母さんの声が聞こえる。
いや、母さんの方が声大きいんだけど。
「あんたねぇ・・・高林のこと忘れたのかよ?
何かあったら、あんたが一番危ないのよ?わかってる!?」
「うん・・・でも家に引きこもってた小椋さんのお兄さんの話を聞いて、
決めたんだ。家で大人しくしてるだけじゃダメだって。
何もしないまま災厄に巻き込まれて死ぬよりは、
合宿で災厄が止まる糸口が見つかれば、それに越したことはないよ。
それにさ、ほら。合宿をする咲谷記念館は
山の麓の森の中にあるから、きっと空気もおいしいし・・・」
大輔の奴、結構自分なりに考えていたんだなぁ。
あいつは、アタシが伸びる分までの身長を吸い取ったんじゃないか?
と思うくらい、にょきにょきと背ばかり伸びやがって、
今じゃ、頭一つ分まで身長差ができてしまった。
そのくせ、いつ躰をこわすかわからないから、
アタシがいなきゃ何もできないと思っていたけど、
それが大きな間違いだということを思い知らされた。
むしろ面倒を見るという名目で、
アタシの方が依存していたかもしれず、
そろそろこっちが卒業しなきゃいけないのかな・・・
なんてちょっと感傷的な気分になってしまった。
「まあ、そこまで言うなら無理強いはしないけどさ。
でもさ、向こうで何があるか分からないんだから、
あんたは吸入器と薬を絶対に忘れるんじゃないわよ!
ストックもちゃんと持って行きなさい!いい?わかった!?」
「ああ・・・うん、大丈夫。ちゃんと確かめておくよ」
「よし。じゃあ、こっちも遅いから切るわよ」
ガチャンと電話を切ると、アタシは「やれやれ」と言いながら
小さくため息をついた。
電話している時のしゃべり声が大きいと、母さんが小言を繰り返していたが、
アタシはそれにかまわず自分の部屋に戻り、また明日の準備を始めた。
大輔の面倒ばかりをみるのも子離れできない親みたいだなと思いつつも、
物心着いた頃からの腐れ縁なので、やっぱり気になってしまう。
そう言えば、ナベとキョウコも合宿に行くはずだ。
いっそ二人に頼んで様子を見てもらおうと思ったが、やめた。
そんなことしても、二人にも大輔にも迷惑だろうと思ったから。
悠は先月、水泳の練習中に溺れたことを引き摺ってるためか不参加、
恵もなんか家庭の事情で行けないらしい。
かく言うアタシも、無事に東京に着けるのかなと不安になる。
噂で聞いた話だと、修学旅行が3年生じゃなく2年生の時にするようになったのは、
十数年前に、修学旅行のバスの事故で3年3組の生徒が大勢死亡したからだという。
綾野や中尾の事件もあって、夜見山市から出ても
いつ災厄が襲ってくるんじゃないかと気になって仕方ないのだ。
まあ、そんなことをいつまでもウジウジ悩んだってしょうがないし、
その時はなるようになれ、当たって砕けろ!と
開き直って考えるようにしたら、少しは気分的にも楽になった。
とりあえず、明日は浅倉がどのくらいまで勝ち進めるか、
お手並み拝見しようじゃないかと思いながら、
アタシは再び、支度の準備を始めた。
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