過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:02:19.35 ID:4DOG5YTr0

「違う!」「やめてよ!」「意味ねぇよ!」

榊原君、望月、そして勅使河原の三人が同時に声を荒げる。
三人は久保寺先生が死んだ後、見崎さんと親しくなっており、
見崎さんの味方だ。

険悪な空気が流れたその時、
『ガラガラガッシャーン!!』と食堂中に響き渡るような音を立て、
先ほどからしきりに喉を気にしていた和久井君が、
崩れ落ちるようにして、テーブルにうつ伏した。

「ちょっとおい、和久井。大丈夫か?」
「苦しいのか?」

言われなくたって、どう考えても苦しそうで大丈夫に見えないが、
風見と僕はほぼ同時にそう言って、肩で激しく息をする和久井君の背を必死にさすった。
風見が千曳先生に和久井君が喘息の発作を起こしたことを説明し、
しかも予備の吸入薬もないという緊急事態であることを、
和久井君が苦しい中で首を横に振って示した。

「三神先生、すぐに救急車を!」

「昨日から電話の調子が悪くて・・・」

「繫がるものはいないか!?」

「アンテナ立ってるのに繫がらねぇ!」

なんてことだ。ここの電話も携帯もPHSも全滅なのか。
そうこうしている間に、和久井君の容態は予断を許さないものになっている。
このままでは高林君の二の舞に・・・!すると千曳先生が、

「私の車で病院に運ぼう。三神先生はここに残って他の生徒たちをお願いします」

そう言うと、レスキュー隊員さながらの敏速な動きで、
悪寒を訴える和久井君を毛布で包み、後部座席に乗せると、
あっという間に、市立病院へむかって年代物のセダンを走らせた。
食事の最中は料理にケチつけてばかりいたが、
こうして緊急時になると、おろおろしていた三神先生より
ずっと頼もしい存在に感じられた。

しかし、予備の薬を忘れ、電話がどこにも繫がらない悪い事態ばかりが続く。
これも普段だったらあり得ない事態が、立て続ける起こる災厄の影響なのか。
正直言うと、三神先生や赤沢さん率いる対策係が頼りなげに感じて、
徐々に不安を感じる自分がいる。
千曳先生がいない今、頼れるのは自分の力だけ。
そして周りを守るのにも、僕が頑張らなければいけない。
そう思えてきたのだ。



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