過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:08:33.56 ID:4DOG5YTr0
「つっっっ・・・!」
髪の毛の根元辺りから、何かべっとりとしたものが流れ出てくる。
それを拭った私の手は赤く汚れていた。
人間とは思えない化け物じみた姿と奇声を放ちながら、
凶暴な光を目に宿したそいつは、私を包丁で斬り殺そうとする。
完全な不意打ちに私は後ずさりすることしかできず、ベッドまで追い詰められた。
そいつはベッドに仰向けで倒れた私の上にのしかかると、
肉を断ち割るように、包丁を振り下ろした。
間一髪逃れる。だが、左手首をかすった。また血が流れてくる。
するとそいつはエプロンにしまってあったのか、金串を左手に持ち、
まさに刺し殺さんと、振りかざした。
こんなところで・・・死んでたまるか!
一か八か、私はまだ力の残っている右腕で金串を掴むと、
渾身の力でそれを奪い取った。
一瞬ひるんだそいつを蹴り飛ばして、ベッドからたたき落とす。
そいつは転げ落ちても再度立ち上がり、飛びかかってくる。
私はその隙を突いた。
「うなぁぁぁ!!!」
懐に潜り込むようにして、金串をそいつの脛に思い切り突き刺した。
けだもののようにそいつは雄叫びを上げると、包丁をかざして威嚇する。
だが、こっちも奪った金串を武器に持っているため、勝負は五分五分だ。
観念したのか、そいつはじりじり後退すると、廊下へ逃げ去った。
すぐ後を追おうとして、私はズキズキと左腕が痛むのを思い出した。
まだ血は止まっていない。
万一のために用意していた包帯で左腕を巻くと、
私はあいつが逃げたと思われる二階の奥を追いかけた。
まだ潜んでいるかもしれない、何かあったらこの金串でとどめを刺してやる。
鍵の開いている部屋を片っ端から開ける。
松井と金木、望月、そして榊原の部屋には誰もいなかった。
ふと望月の部屋に置いたままのカセットテープに目が行く。
私は躊躇せず、それをポケットに忍ばせた。
一階に降りても、まだあいつは見つからなかった。
血の跡で分かるはずだが、照明が落ちていたのか、暗すぎて見えない。
「くそっ・・・あのババア、どこへ逃げやがった・・・」
もたもたしている間に泉美に何かあったら・・・
必死にその悪い予感を頭の中から払いのけ、
廊下を通り過ぎ、フロントに辿り着いた。ちょうど丸一週したということか。
二階に人影が見えた。あの長い髪は間違いない、泉美だ。
廊下の方からなにやら叫び声が聞こえたけど、
今は泉美の無事を確認する方が先だ。
不安を堪えながら、階段を一歩一歩上っていく。
そして泉美は
「いた・・・」
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