過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:09:13.88 ID:4DOG5YTr0
「多佳子!大丈夫なの?」
満身創痍の私を見て、泉美が駆け寄る。泉美はどこも怪我していない。
「よかった・・・泉美まで死んじゃったら、私生きていけない」
一瞬驚く泉美の後ろで、泉美に災いをなす忌まわしき奴の姿が見えた。
そいつを消しさえすれば・・・口元が自然と、緩んでくる。
「泉美は私がいないと・・・」
戸惑う泉美にかまわず、私は奴を狙って金串を振り上げた。
「『死者』を死にぃっっっ!!!死に還すっっっ!」
止めようとする泉美を振り払い、奴を刺そうとした瞬間、
横から突き飛ばされた。手に持った金串が外れ、宙を舞いながら地面に落ちる。
「邪魔するなぁ!」
榊原恒一、どこまでも私の行く手を阻む憎い奴め・・・!
実は、榊原を二人目の『いないもの』にしようと泉美に提言したのは、
何を隠そう、この私だ。
『死者』と最も近い立場にいるあの男は危険だ。
泉美の心だけでなく、泉美の命まで奪っていきそうな気がする。
あいつの魔の手から泉美から引き離そうと、我ながらいいアイデアだったが、
久保寺の野郎が死んだせいで、水の泡となってしまった。
そして今、榊原は自分の母親の件で、姉さんにまで不吉な影を落としている。
憎しみを込めて、私は榊原を思いきり蹴り上げてやった。
が、榊原は金串を私から奪い取ると、奴を庇い出す。
丸腰になってしまった私は、一転して不利な状況に追い込まれた。
「ちぃっっっ!!!」
一旦引き下がることにした私は、ふとカセットテープのことを思い出した。
そうだ。今こそ、これを使う他に手立てはない。
「ふふっ、ははは・・・アハハハハハハハハハハハハ!!!」
階段を降りる途中から、私は笑いが止まらなかった。
これで奴を消せるじゃないか!?
奴に皆の憎しみと殺意の矛先が向かえば、私が出るまでもない。
何、心配はない。
『死者』が死ねば、その存在も記憶もすっぽり消えてしまうのだから、
忌まわしい思い出も全て失われる。
問題は決定的な証拠に欠けるところだが、
理由なんぞ後から付ければいい。
奴は小さい頃に片眼を失っているはずなのに、
昔私が見た奴には両目があった。これは絶対おかしい。
「不完全な復活をした」
よし、これでいこう。
これで皆も、奴への不信感を募らせるに違いない。
事務室のドアを開け、私はカセットテープを差し込み、
マイクのスイッチをオンにした。
今度こそケリをつける。
中尾たちを死に引きずり込んだ、あのふざけた災厄を終わらせてやる。
これ以上無駄に犠牲者を出すのなら、
どうせ消えてしまうたった一人の『死者』を殺すなんて、造作もないことだ。
これでもう、泉美も姉さんも、誰もがもう死の恐怖に脅かされることもない。
そうだ、これはみんなのためだ。
正義は私にある。
そう自分に言い聞かせながら、私は館内放送のチャイムを鳴らした。
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