過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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88:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:13:26.34 ID:4DOG5YTr0

そして3年生になった今年。
アシはようやく王子と一緒のクラスになった。
また、フルートを担当している部長の多々良さんも、
同じクラスになったのはこれが初めてじゃ。
けんど、アシらが所属する3年3組、これがくせ者じゃった。
何でも、毎月クラスメイトとその家族が不幸な事故に遭って
じゃんじゃん死んでいくという、
そりゃ恐ろしい呪いがかかっちょるそうな。
とても、信じられんものじゃろ?

じゃけん、委員長の桜木、高林が次々に死に、
そして先月には久保寺センセまでが、みんなの目の前で
自分の首を包丁で刺して死ぬという考えられへん死に方をしよった。
アシもこの時、返り血をぎょうさん浴びて散々な目におうたぞな。

翌日、クラスの教室がB号館になっとったが、
あんな事件が起きたせいで、半分近くが欠席しよった。
多々良さんは出席したが、王子は出てこんかった。大丈夫じゃろか?
アシも正直怖かったけんど、一人家の中で籠もる方がもっと嫌じゃった。
元々アシは、周りのみんなと一緒におる方が、どうも居心地がいいようじゃ。
やがて王子も部活には復帰して、中学最後のコンクールを迎えた。
結果は残念ながら銀賞、ほんに惜しかった。
アシは初めて見た多々良さんの悔し涙が、今も目に焼き付いて離れとらん。

そして迎えた、災厄を終わらせるための合宿。
多々良さんは家が色々忙しいらしく不参加やったが、
王子は直前になって、参加を決めたそうな。
やっぱりアシ一人だけより、王子と二人一緒の方が心強いぞな。

けんど、この合宿は初めから不穏な空気が流れておった。
夕食になって早々、赤沢と見崎がケンカを始めよって、
その最中に和久井が発作を起こして倒れ、千曳センセに運ばれてしもうた。
アシはここに来るまで明るく振る舞って、
みんなを盛り上げようとしたけんど、
こんな調子じゃ、逆に空回りし続けそう気がしよる。

部屋に戻ってから、王子が突然アシに尋ねてきおった。

「なぁ猿田・・・」

「どげしたん?」

「なんかこの屋敷、少し不気味じゃないか?古いから仕方ないけど、
ほら、見た目が去年修学旅行で遊びに行った遊園地のお化け屋敷みたいだし、
さっき電話が繫がらなかったのも・・・」

「そうじゃのう、アシもなんかこの洋館はいかにもワケありって感じがして、
どうもきな臭い感じがするけん」

「やっぱり猿田もそう思う・・・?」

「ふーむ」

王子はああ見えて、意外に小心なところがある。
さっきの話にあった、遊園地のお化け屋敷や絶叫マシーンに乗った時も、
いきなりアシの手を繋いできおって、
その時の王子の手は、死人のように冷たかった。
けんど、部活ではそんなそぶりを見せたことは一度もなく、
結構無理しとんだな・・・と勝手に感心してしまったもんじゃ。
ほやけん、いざとなったらアシが王子をしっかりフォローせんといかん、
時々そう思うようになったぞな。



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