過去ログ - 燈馬「おはようございます」可奈「はい、お弁当」
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125:燈可奈弁X ◆WxhrC2Qhtw[saga]
2012/09/06(木) 04:27:31.79 ID:EZgLHkXD0
>>124

「あの折、富樫の事では本当にお世話になりました」
「いや、いいんだよそんな改まって」

と、言ってくれるが、男の好意が分からない年齢、或いは経験値ではない。
只、あの頃はまだ、工藤は妻子持ち。自分もまだ多感な娘を抱えて不倫など選択の他だったが、
とにかく富樫に追い込まれていた所を工藤に助けられ、
弁護士を紹介して貰う等の助力を得て離婚まで漕ぎ着けたのは事実だった。

 ×     ×

「今夜はご馳走様でした」

ドルチェまで十分に楽しみ、タクシーの中で可奈は工藤に礼を言う。
当初は乗り気では無かったが、不自然な行動は慎む、と言うルールにより恩人の誘いに乗った。
そうして見ると、全く何も事情を知らない工藤にどこかほっとして、
そして久しぶりにちょっと華やいだ出来事は可奈の気分を幾分楽にする。
実際、工藤はあの頃も今も優しかった。

「又、食事付き合ってくれるかな?」
「嬉しいんですけど、食事はなるべく美里ととりたいので」
「今度、美里ちゃんも一緒に。回転寿司なんかいいかな?」

美里との会食。妻を癌で亡くしたとつい先ほど言っていた工藤の思惑は余りに明らかだった。

「あ、ちょっと、急だったかな?」
「いえ、あの、考えておきます。ああ、美里の事ははい」

何とも官僚的な答弁。ちょっとは慣らしたお水上がりがこんな時に上手く思い付かない。
何しろ事情が事情だ。元々美里は可奈からも多感に見える少女。
それも、自分が今まで苦労をかけたからだとも思う。
そんな美里が、とにもかくにも今こんな状況で
義父なんてものをもくろむ男と対面したらどんな事になるか、手に余ると言うのが可奈の正直な所だった。

「それじゃあ、楽しかったよ」
「はい。今夜は本当に有り難うございました」

アパートの近くで、タクシーの中に向けて可奈がお礼を言う。
タクシーが走り去った時、可奈は何か悪寒を覚えた。
振り返ると、視線の先には自宅アパートの外階段。そこに、男性にしては少々小柄な人影。
マフラーを口まで上げた燈馬想がこちらを見ていた。
可奈がその表情を確かめる前に、想はふいっと背中を向けて自分の部屋に引っ込んだ。


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