過去ログ - 燈馬「おはようございます」可奈「はい、お弁当」
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19:燈可奈弁X ◆WxhrC2Qhtw[saga]
2012/08/11(土) 02:30:32.35 ID:9RA2XFou0
>>18

「アリバイを作りましょう」

立ち上がった想が、使用済みのルーズリーフと下敷きを懐にしまいこみ、ぼそっと言った。

「下敷き文房具代その他、当座の必要経費です」

想が、机に一万円札を置く。可奈は、今度こそ泣き出したくなっていた。
もし、十余年前の自分がこの光景を見ていたら、迷わず二人まとめてぶん殴って警察を呼んでいた筈だ。

今からでも遅くはない。今までの手助けとは訳が違う。
彼にとって正しい事など何一つ無い。証拠の隠滅だって立派な犯罪だ。
社会にとっても彼自身にとっても大事な燈馬想と言う一人の男性。
彼の経歴、そして当たり前の良心を傷付けていい理由なんて何一つ無い。

そして、このままでは輝いていたあの日々、
どれだけ心の支えになったか知れないあの思い出まで、全て取り返しの付かない泥にまみれてしまう。

そう考えた時、可奈は隣を見る事が出来ない。
今、自分にとって何が一番大事なのか。
思い出を踏みにじり無関係な、
自分にもそして社会にも掛け替えのない大切な人を巻き込むのに娘を言い訳にしているのではないか。

逆に、そんな自分の過去のために、今一番に考えなければならないのは、
自分の小ささ、卑怯さに嫌と言うほど直面する。
殺した相手が相手だ、心の底では多分悪いとは思っていない。

あの天才の燈馬君ならうまくやってくれる、これからも何事もなく罪に問われる事もなく、
そうやってうまくやってくれるかも知れないいややってくれる。
今まで何度も、なんだかんだ言って助けてくれた彼なら。

そうだ、本来であれば彼はとっくに警察を呼んでいる筈。だが、そうしていない。
それが、今の自分の本心なのだと、そう思った瞬間そんな化け物を退治して自首する、
そうしなければならない、泣き喚きそうになっても体が動かない。
そして、又、娘を言い訳にする自分がいる。

「おかあさん、おかあさん」

その心が無限ループに食い殺される寸前に揺り戻されて、可奈は只、愛娘を抱き締めて歯がみしていた。

「色々、聞きたい事があります」


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