74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/08/25(土) 00:59:50.05 ID:L6DxfP1DO
眼鏡をかけた、エプロン姿の、気弱そうな男だった。
「猫?こんなところで何をしているのかな?」
優しく笑いながら、彼は近づいてくる、敵意も悪意もない。
クロは、ただ彼を見ていた。
クロ「ニャア」
「お腹でも空いたのかな?」
クロ(おぉ、正解)
「えぇと、はいこれ。」
すると、彼はエプロンのポケットから一つまみほどの煮干しを取り出すと彼の前にそっと置いた。
クロ(お前は大阪のおばちゃんか。)
「それにしても。もうすぐ、日も落ちそうだけど良いことあるかもなぁ。」
一本ずつ噛み締めるように煮干しに食らい付くクロを優しく見下ろしながら彼は言った。
「知ってるかい?黒猫は不幸の象徴とされているんだ。」
クロの動きが止まった。
「でもね、外国では黒猫は幸せを運んでくるとも言われているんだ。」
食べるのを止めて、クロはジロリと男をねめつけた。
「なら、僕は。君を幸福の使者だと思うことにする。」
だって
「出会いを全て、不幸にしてしまうなんて、一番不幸なことじゃないか。」
そう言って、男は真っ直ぐな瞳でクロの瞳を覗き込んだ。
そして、それは───
クロ「グレー?」
「あれ?今、誰か喋っ、あぁ!待ってよ!」
男が疑問に思う前に、クロは全力疾走でその場から走り去っていった。
「もっとしっかりしたご飯をあげたかったんだけどな。」
あり得ないことをした。 ヘマもいいところだった。苛立ちがわく、自分自身に。
親離れできないガキじゃあるまいし。
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