48:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:50:58.00 ID:bOaug2Ec0
汽車はもう、しずかにうごいていたのだ。
車室の天上の、一つのあかりに黒い甲虫がとまってその影が大きく天井にうつっていた。
女は、なぜか先生に怒られている生徒のように、下を向いてじっとしていた。
赤ひげの人は、なにかなつかしそうにわらいながら、男や女のようすを見ていた。
汽車はもうだんだん早くなって、すすきと川と、かわるがわる窓の外から光った。
赤ひげの人が、少しおずおずしながら、二人に訊いた。
「あなた方は、どちらへいらっしゃるんですか。」
男「どこまでも行くんです。」
男は、少しきまり悪そうに答えた。
「それはいいね。この汽車は、じっさい、どこまででも行きますぜ。」
女「どこまででもって、どこですか?」
女が、いきなり、喧嘩のようにたずねたので、男は思わずわらった。
すると、向うの席に居た、尖った帽子をかぶり、大きな鍵を腰に下げた人も、
ちらっとこっちを見てわらったので、女は顔をまっ赤にして不機嫌になってしまった。
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