178:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/24(月) 23:52:38.54 ID:iCwr9AuZo
ちょうど駅のプラットホームから出発しようとしていた電車にユキは乗った。このとき
あたしはエスカレーターの上にいた。あたしは慌ててエスカレータの残り数段を駆け上が
って扉が閉まる寸前の電車に飛び乗った。
発車直前に電車に駆け込んだあたしの方に乗客の視線が向けられたけど、それはすぐに
無関心な沈黙に変わった。ユキは少し離れた場所で吊り輪に掴まっていたけど、あたしの
方を気にしていた様子はなかった。
さあどうしよう。
とりあえずユキを追い駆けて同じ電車に乗ったのはいいけど、たとえあたしにそんな勇
気があったとしても車内でユキに声をかけるわけにはいかない。そんなことをすれば間違
いなく一目を引くだろうし、第一いきなり電車の中で初対面の女に話しかけられればユキ
だって混乱するに違いない。
あたしはだんだ弱気になってきた。今日はもう諦めようか。あたしは吊り輪に掴まった
ままイヤホンをさして音楽を聴いているユキの方をちらちらと眺めた。
今日は土曜日だから私服姿だけどやはり何と言うか制服姿と同じくらい品のようなもの
が感じられる。いきなりあたしなんかに話かけられたら警戒されるのは間違いないような
気がする。
もっともそうだとすると、彼女がさっき突然話しかけて来たイケヤマに笑顔を見せた理
由もわからないけど。
もうすぐあたしの家の最寄り駅だった。ユキに話しかけて彼女から話を聞くのは、さっ
き思いついたときはいい考えだと思ったのだけど、だんだんとそれほどいい考えでもない
ような気がしてきた。声をかける勇気がないということもあるけど、よく考えればユキは
奈緒の友だちだった。ナオトの妹に話しかけられたんだよとかってユキが奈緒に話すこと
だって考えられる。奈緒の意図を邪魔しようとしている今は、あたしが動いていることを
彼女に悟られるというのは望ましくない。
今日は止めておこう。あたしはついに諦めて次の駅で降りようとしたその時、あたしよ
り先にユキが電車から降りてホームを歩いて行った。
そのせいでユキに話しかけることを諦めたあたしだったけど、引き続きユキの後をつけ
るようになってしまった。
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